ハーランド、マネ、そして南野拓実…レッドブル・ザルツブルクが有望選手を続々と輩出できる秘密とは?

2020年03月22日 遠藤孝輔

16~20歳の若手有望株に絞ったスカウティング戦略

近年ザルツブルクへビッグクラブへ送り込んだ(左から)南野、ハーランド、マネ。(C) Getty Images

 欧州サッカーの最先端で"メイド・イン・ザルツブルク"が大きな存在感を放っている。

 ドルトムントで眩いばかりの輝きを放つアーリング・ハーランドをはじめ、世界王者のリバプールでプレーするサディオ・マネ、ナビ・ケイタ、南野拓実は、いずれもレッドブル・ザルツブルク出身だ。

 チャンピオンズ・リーグ(CL)やブンデスリーガで躍進中の"姉妹クラブ"RBライプツィヒを支えるDFダヨ・ウパメカノやMFコンラート・ライマー、アマドゥ・ハイダラなどもオーストリアの強豪で技を磨いた経歴を持つ。

 いまや欧州有数の人材供給クラブと称されるザルツブルクは、なぜ次々と優秀なタレントを輩出できるのか。その秘密はスカウティング戦略と若手逸材の才能を伸ばす育成力にある。

 スカウティングの大きな特徴は、ターゲットの年齢制限を設けていること。基本的には16~20歳の有望株しか狙わない。欧州のトップクラブに比べ、強化予算が5分の1程度に過ぎないため、いわゆるスタープレーヤーを獲得できる可能性が低いのが大きな理由だ。
 

 ビッグクラブが目をつけていないか、将来性を見極めきれずに獲得を悩んでいる有望株を素早く手中に収め、育てて売るシステムを機能させている。

 とはいえ財政面に余裕があるビッグクラブなど少数であり、ザルツブルクのような持たざるクラブの方が圧倒的に多い。つまりは同じ戦略のライバルが無数に存在するわけだ。

 では、いかにして"違い"を作り出すのか。ザルツブルクの方針は実にシンプルで、それは若手有望株の発掘およびサインをできるだけ迅速に済ませることだ。

 そのためにスカウト部門は、常日頃からチームスタイルに合いそうな選手を探している。監督が代われば、往々にして補強候補も変わってくるものだが、ザルツブルクにはその類の心配はない。

 かつてのスポーツディレクターであるラルフ・ラングニックが植え付けたアイデンティティーが変わることはないからだ。それはハイプレス、素早い攻守の切り替え、縦に速い攻撃を重視する戦術であり、若手中心のチーム編成などもそうである。これに共鳴できない監督はそもそも招聘されない。

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