「ここまで鍛える選手は初めて」リバプールを葬ったジョレンテ。圧巻の活躍を呼び込んだ“父譲り”のプロ意識【現地発】

2020年03月18日 エル・パイス紙

徹底したストイックな生活

王者リバプール撃破の立役者となったのがこのジョレンテだ。(C) Getty Images

 チャンピオンズ・リーグのラウンド・オブ16、リバプールとの第2レグ(アトレティコ・マドリーが3‐2で勝利、トータルスコア4‐2でベスト8に進出)で1点目を決めた後、マルコス・ジョレンテは右腕の上腕二頭筋を曲げて、そこに目を見やった。まるで自らの鍛え上げた身体と徹底した食事管理が現在の活躍に繋がっていることを確認しているかのようでもあった。

 このMFのプロ意識の高さは、1980年代後半から90年代前半にかけてレアル・マドリーで活躍し、極度の野菜好きが高じて当時のチームメイトからエル・レチューガ(スペイン語でレタスの意味)と呼ばれた父親のパコ・ジョレンテ譲りのものだ。

 そのこだわりぶりはオーガニック野菜、牛肉、鶏肉、魚、ライス、数種の豆、低温殺菌牛乳しか摂取しないほどで、これまた趣味が高じてアラベス時代の同僚だったイバイ・ゴメス(現アスレティック・ビルバオ)との共同経営で健康食を専門にしたレストラン2店舗をマドリードに構えている。
 
 ジョレンテは練習熱心なことでも知られている。チームの全体練習に加え、日々パーソナルトレーナーとともに精力的に汗を流す。さらに就寝時も、日中に吸収する電磁波を除去し、隔離する効果のある「HOGO」と呼ばれる黒鉛と銀でできた特殊メッシュ製のベッドを使用している。

 全ては力強くしなやかなボディを手に入れるためで、スタミナを養う一環としてランニングも欠かさない。

「ここまで自分を追い込んで鍛える選手は初めてだ。ファンフラン(現サンパウロ、昨夏に退団)も常にコンディションに気を配る模範的な選手だったが、マルコスはさらにその上を行っている」

 アトレティコのスタッフはこう舌を巻く。

 昨夏、移籍金4000万ユーロ(約50億円)で宿敵レアル・マドリーから移籍してきたジョレンテは、しかしベンチ生活が続いた。周囲からも、ポジションが同じで昨シーズンに活躍を見せたロドリ(現マンチェスター・シティ)と何かと比較され、その劣っている部分を指摘されもした。

 ヒエラルキーを重視するディエゴ・シメオネ監督は、サウール・ニゲス、コケ、トーマス・パーテイを中盤で重用。第4MFとしては、ジョアン・フェリックスやアンヘル・コレアといったアタッカーを常時起用し、なかなか居場所を見出すことができなかった。それでも、「日々トレーニングに励むことが僕の責務だ」と口癖のように言っていた。

 そして、ここにきて運動量とインテンシティーが不足している中盤の起爆剤としてシメオネ監督は、ジョレンテを起用する機会を増やしている。(アトレティコは4‐4‐2が基本システムだが)4-3-3の右インサイドハーフとして振る舞うこともあった。中盤センターが本職の彼にとっては不慣れなポジションであるが、指揮官の期待に応えていた。リバプール戦での2得点・1アシストの大活躍も、上り調子にあった中でのパフォーマンスだった。

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