ドイツの最前線で戦い続ける36歳。長谷部誠が目指す選手像「フュールングシュピーラー」とは?【現地発】

2020年03月17日 中野吉之伴

昨季に比べて先発機会は減っているが…

36歳を迎えた長谷部。フランクフルトの主力として戦い続けている。 (C) Getty Image

 1月に36歳の誕生日を迎えたフランクフルト所属の長谷部誠は、今年に入って出場機会を減らしている。公式戦10試合中5試合に出場、フル出場は4試合。負傷や病気でもない限り先発から外されることがなかったこれまでと比べると、確かに立場は変わってきた。

 そうした環境の変化をファンも危惧する。昨季は不動の存在だっただけに、1~2試合起用されなかったら、「監督とそりが合わないのか?」「コンディションが良くないのか?」などと心配されてしまう。

 だが、長谷部は出場した試合ではしっかりしたパフォーマンスを発揮し、高く評価されている。特にヨーロッパリーグ(EL)ラウンド・オブ32の第1レグ、ザルツブルク戦ではアンカーの位置で先発し、攻守の軸として完全にゲームをコントロールしていた。インテリジェンスあふれるプレーの連続に、ドイツ紙の多くは「このフォームの長谷部はスタメンから外すべきではない」という論調が強くなっていた。

 首脳陣からの信頼はいまでも厚く、CBダビド・アブラアムの欠場で急遽スクランブル出場した第22節アウグスブルク戦後には、アディ・ヒュッター監督も「マコトはチームに安定感をもたらしてくれた」と称えていた。

 長谷部自身も、自分の役割をよく理解している。

「どんな試合でも、どうしてもバタバタしてしまう場面がチームとしてある。そういうときに、自分のこれまでの経験を活かして、皆を落ち着かせることは自分の役割。すべての試合で先発出場はなかなか難しいと思うけれど、チームの中でフュールングシュピーラー(周りを引っ張る選手)にというか、ピッチ内だけじゃなく、ピッチの外でも手本でありたいなと思っている」

 チームにとっては、長谷部の出番が減ったことは、悪いことばかりではない。振り返ってみると、昨季のヒュッター監督は、シーズン中に何度かローテーションを試そうとしていた。しかし、チーム力が落ちてしまうことを危惧してか、基本的に主力メンバーをいじらずにシーズンを戦い抜こうと試みた。そして一時はリーグではCL出場権を狙える4位以内にまで浮上し、ELは決勝まで勝ち進んだ。

 ここまで来たらいけるところまでいこうと、選手も監督も腹をくくった。結果、疲れがピークに達してしまい、シーズン末に向けたある時期を境に、チームはまったく動けなくなり、リーグでも順位を下げ続けてしまった。最終的にEL決勝ではアーセナルに敗れ、リーグは7位で終了。今季のELには予選3回戦からの出場権を得ている。

 ただ、最終的に力尽きたとはいえ、「一兎ではなく、二兎三兎を追ったことで見えたものがある」(長谷部)と、自分たちの挑戦を誇りに思っているようだ。

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