東京五輪へ向けた最終滑走へ――川崎vs鳥栖で見えた3人の注目大卒ルーキーたちの現在地

2020年02月24日 竹中玲央奈

大卒ルーキー3人が開幕戦のピッチに立つ

川崎対鳥栖で相まみえた大卒ルーキーの3人。左から三笘、旗手(ともに川崎)、森下(鳥栖)。写真:サッカーダイジェスト

 2月22日に行なわれた川崎フロンターレ対サガン鳥栖の開幕戦、注目の大卒新人たちがピッチ上でしのぎを削りあった。鳥栖の森下龍矢は、ルーキーながら先日のルヴァンカップに引き続き、先発の11人に名を連ね、川崎は旗手怜央と三笘薫が65分から揃って途中出場。彼らは昨年のユニバーシアードで金メダルをとった全日本大学選抜の一員でもあり、J1の舞台で主力級の活躍が期待されていた選手たちだが、J1デビュー戦でその力を存分に示せたように思う。ただ、双方の選手が見せた表情は対照的であった。

 結果としてスコアレスドローに終わったこの試合で、川崎は鳥栖の6倍以上に及ぶ19本のシュートを放つもネットを揺らせず。川崎が押し込み、鳥栖が耐えるという展開が90分の大半を占めたことを考えると、川崎が勝点2を落とした試合と言って良い。

 その中で三笘薫は左サイドから得意のドリブルでチャンスを創出し、旗手怜央は3本のシュートを放ち、ゴールまであとわずかというシーンを見せた。J1の舞台でも数字を残せる気配は出せたことはチームとして収穫である。とはいえ、当人たちの表情は渋かった。

「そこまでいっても結果が求められる世界だし、ここで決められないのは自分の技術的なミス、判断のミスなので。まだまだそこについていけていない部分がある」(旗手)

「ゴールに向かうプレーはできていましたけど、最後のシュートに向かうところはできていないですし、サイドをえぐってクロスも出せていないですし、そういうところはまだまだ」(三笘)

"試合を決める"プレーを求められた中で結果を示せなかったという事実に対し、ふたりの表情は驚くほどに渋かった。ともに東京五輪を目指すなかで1試合1試合が勝負であり、本番までの時間も長くはない。そういう意味で彼らが求めるのは目に見える結果であり、求める基準がJ1で通用するか否かではないことを、改めて感じ取れた。

「絶対に負けたくなかったんですけど華麗にかわされて。もちろん僕自身、1対1をやりたいし、打ち負かしたいという思いはあったのですが、チームのためなので。(ラインを)下げるところは下げる。でも最後に侵入させたところで守るというのは、自分の中でもモヤモヤする気持ちはありますけど、徹したなと」

 一方で"守り勝った"鳥栖の森下は、65分から実現した三笘とのマッチアップをこう振り返る。最初の対峙でこの日最大級とも言える強度の高さで"狩り"に行ったシーンが印象的で、その後も数回、三笘に翻弄される場面はあったものの、結果として無失点に貢献。

 ただ、チームのスタイルと照らし合わせても本意ではない守りに回ったこの試合は、とうてい納得がいくものではなかった。

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