「たった3分の逆転劇」をもたらした指揮官ヴィラス・ボアスの魔術。酒井宏樹所属のマルセイユ、CL出場権獲得へ前進!【現地発】

2020年02月22日 結城麻里

13-14シーズン以来遠ざかっているCLへ近づく

今季から監督に就任したポルトガル人のヴィラス・ボアス。 (C) Getty Images

 ほとんど誰も信じていなかった。いや、「彼ら以外は」と言うべきだろうか。

 フランス時間2月16日夜のゴールデン・タイム。リーグ・アン第25節の大一番は、ここにきて疲労と失速が目だっていたマルセイユ(2位)と、2トップに切り替えてから勢いに乗っていたリール(4位、昨季準優勝)が対峙していた。

 マルセイユはフランスカップ準決勝でリヨンに敗北したばかり。敵地リールも得意な場所とは言えない。そのうえ、頼みのディミトリー・パイエットが怪我で欠場となり、ネマニャ・ラドニッチは恥骨炎で不調に。アタッカーのダリオ・ベネデットとヴァレール・ジェルマンは久しくゴールがない。オフェンス陣は「無」だった。

 この間、アンドレ・ヴィラス・ボアス監督が「鉄の守備」でリーグ2位をキープしてきたことは、奇跡に近かった。

 対するリールは、ニコラ・ペペの後を難なく埋めた快速ヴィクター・オシメーンと、経験豊富なロイック・レミーがコンビを組み、ジョナタン・バンバとジョナタン・イコネも健在。ちょっとした「カトル・ファンタスティック(4人のファンタスティック)」が形成され、超攻撃的チームとなっていた。

 大半のウォッチャーが、「今日のマルセイユは0-0狙いだろう」と予想。そして実際に、ゲームの主導権は完全にリールにあった。

 だが、「鉄の守備」を敷いたマルセイユが、オシメーンとレミーの猛攻に遭いながらも、GKマンダンダのスーパーセーブで何とか切り抜ける場面が続いた。前半は、「マルセイユは低い位置だが極めてコンパクトに戦い、完全にスペースを潰すよう非常によく組織されていた」(中継局Canal+の特番『Canal Football Club』でのミカエル・ランドローによる分析)。酒井宏樹もこれに貢献した。

 しかし、チャンスらしいチャンスは生まれず、勝利に対しては「やはり…」という思いが人々の脳裏をかすめ始める。なにしろマルセイユの前半シュート数はたった1本(枠外)。後半は案の定、51分にオシメーンに突破されて0-1とされた。

 その後、56分にレミーにネットを揺らされるというシーンでは、オフサイドで取り消しになってホッと胸を撫で下ろしたものの、マルセイユ・ファンの間では「攻撃陣が不在だからもう無理だろう」という空気が流れていた。
 

次ページ一喜一憂しながら試合は終盤へ…

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