ジダン、バルベルデ、ポステコグルー…千差万別の「選手交代」へのこだわり【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2020年01月20日 小宮良之

すぐに試合の流れに入れたモラタ

先日バルサの指揮官を解任されたバルベルデ(右)は、ビダル(左)を切り札として起用した。

 サッカーは、90分の戦いのスポーツである。

 試合開始時点では、ガソリンが満タンの状態。そこから、お互いがゴールに向かって燃料を使い、時間とともに消耗していく。つまり、最後はガソリンが足りなくなるのだ。

 指揮官は、エンストを起こさないうちに選手を入れ替えなければならない。しかし選手交代は単純な燃料交換と違い、違和感を生じさせることもある。交代選手がフィットせず、むしろ弱点になってしまうこともあるのだ。

 サッカーは基本的に3人の交代が認められている以上、そのマネジメントに監督の手腕の一部が問われるのだろう。

 バルセロナの前監督エルネスト・バルベルデは、そのマネジメントで一つの形を持っていた。

<パワー投入>

 そのためのカードをベンチに置いていた。バルサでの1年目は、ブラジル代表MFパウリーニョだった。2年目からはチリ代表MFアルトゥーロ・ビダルだ。ふたりとも、他のバルサのMFと比べると、スマートなスキルよりもインテンシティーに特徴がある。

 ふたりは攻守両面で人に強く、局面で負けない。疲労が濃くなってきた中盤に投入し、彼らが躍動することで、相手を勢いづかせない。むしろ相手エリアまで侵入し、脅かすことによって戦況を有利にする。そのため、どちらも交代出場が少なくなく、本人たちは不本意だったかもしれないが、先発よりも途中出場のほうが活躍している。
 
 ジネディーヌ・ジダン監督がレアル・マドリーを欧州王者に導いた時も、アルバロ・モラタのような切り札をベンチに隠し持っていた。そこから"もう一戦"を戦うというのか。相手が疲れ切った状態で、フルスロットルで走り回り、ゴールを狙えるモラタを投入。一気に差をつけるのだ。

 指揮官は、選手の適性を見極める必要があるだろう。例えばモラタは途中で試合に出ても、すぐに試合の流れに入れた。サブスタートでも、少なくとも当時は腐ることがなかった。

<エンジンが気持ちよくすぐにかかる>

 モラタはそのタイプの選手だ。

 なにより、ジダンはそれを承知していた。シーズン終盤、選手の疲労がたまる中では、そうした選手が重宝される。試合を動かせるからだ。
 

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