「別に焦ってはないですけど…」また無得点。それでも異彩を放った静岡学園の松村優太は何を思う?【選手権】

2020年01月05日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

徳島市立の堅守をこじ開けたドリブル

サイドへの警戒が強まるなかでも、圧倒的な存在感を放った松村(10番)。徳島市立の守備陣を見事に切り裂いた。 写真:徳原隆元

[高校選手権準々決勝]徳島市立0-4静岡学園/1月5日(日)/駒沢陸上競技場

"静学"の背番号10が異彩を放った。松村優太だ。

 この日も超攻撃型の4-3-3の右ウイングで先発出場を飾った松村は、「思い切っていった」という立ち上がりから文字通りエンジン全開。フィールドプレーヤーの10人全員が自陣に引き、サイド攻撃への警戒を強める徳島市立の5バックシステムを物ともせずに、積極果敢に仕掛けた。緩急を自在に操り、相手を翻弄するドリブラーは、24分には3人、31分には4人もの相手DFを自慢のドリブル突破で引き裂いた。

 そんなナンバー10が、最も観衆を沸かせたのは、前半終了間際の40分だ。ショートカウンターの流れから右サイドでボールを受けると一気に加速。眼前に立ちはだかる徳島市立のDFを抜き去って、絶妙なクロスをエリア中央へ供給し、チーのム3点目となる岩本悠輝のヘディング弾をお膳立てした。

 前半の途中から「今日は行けるんじゃないかなと思っていた」という松村は、得意のドリブルから呼び込んだアシストシーンに対する手応えを口にした。

「まず良い形で、前を向けて、相手と1対1の状況になれたので、シュートを考えたんですけど、ドリブルを始めた時に相手が(中を)切ってきているなと感じたので、縦にいきました。そこでちょっと浮かしたボールを出せば、誰かいるんじゃないかと思っていたんで、上げたら岩本がいた。それは昨日から話していたので良かった。あれは大きかったんじゃないかと思います」

 3試合を戦って、チームは15得点と攻撃陣が絶好調だが、松村は無得点。エースと呼ばれる本人に得点への欲が生まれていても何ら不思議ではない。川口修監督も「目線を変えて、取らせてやりたかった」と後半20分過ぎから左サイドにポジションを変更させる工夫を凝らしたが、"ゴラッソ"は生まれなかった。

 結果に焦りはないのか。松村は、「なかなか点は取らせてもらえない」と漏らしつつ、こう続けた。

「もちろん点は取りたいですけど、やっぱりなかなか厳しいんで、守備や味方に点を取らせることは意識しています。でも、まぁ、監督もそろそろ僕に取ってもらいたいと思っているところなので……(笑)。別に焦っていないですけど、次は取りたいですね。周りからはテレビに映っていたら強いねとか言われるので」

 23年ぶりの選手権ベスト4へ駒を進めた緑の精鋭軍団。そのなかで輝きを放つナンバー10に今大会初ゴールは生まれるのか。堅守を誇る矢板中央との一戦は、1月11日に埼玉スタジアムで行われる。

【選手権PHOTO】徳島市立0-4静岡学園|岩本のハットトリックで静岡学園が徳島市立に勝利

取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)
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