ジェラード退団に見る「生涯1クラブ」を貫き通すことの難しさ

2015年01月04日 サッカーダイジェストWeb編集部

現在クラブの象徴である生え抜き選手にも移籍は十分ありうる。

幼少時代から在籍したリバプールで獲得した最大のタイトルは2004-05シーズンのチャンピオンズ・リーグ。ラストシーズンで、クラブとしては89-90シーズン以来、自身としては初のリーグ優勝を果たしたいところだが……(20節終了現在で首位と17勝点差の8位)。 写真の右側はリバプールひと筋で一昨年に引退したジェイミー・キャラガー。 (C) Getty Images

 リバプールの象徴であるスティーブン・ジェラードが、今シーズン限りでの退団、そしてアメリカMLSへの挑戦を表明したことは、世界中に驚きを与えた。
 
「最もタフな決断」を下した理由として、「キャリアを終える前に新しい体験がしてみたかった」と語ったジェラード。誰もがリバプールでキャリアを終えると思っていただけに、大きなショックを受けたファンも少なくなかった。
 
 ジェラードのような生え抜きで、プレーにおいても、精神面でもチームの中心であるシンボル的選手が、そのキャリアの晩年で愛着のあるクラブを離れるケースは、最近ではレアル・マドリーを去ったラウール・ゴンザレス(2010年にシャルケへ移籍)が挙げられる。
 
 シンボルがチームを去る理由は様々。選手が退団を求めるケースもあれば、クラブ側が戦力外とすることも。よくあるのは、クラブが選手に引退を勧告してコーチやフロントとしてのポストを用意するも、選手が現役続行を希望して新天地を求めるというかたちだ。
 
 チームのシンボルともなれば、クラブとしても粗末に扱うわけにはいかず、しかも年俸も長いキャリアのために高額なものとなってしまう。ミランで現役生活を全うしたパオロ・マルディーニも晩年は契約交渉で揉めたり、その影響力の強さからフロントと対立したりもしたが、ともすればクラブにとって疎ましく厄介な存在にもなりうる。
 
 クラブにとっては、ファンやチームメイトから絶大な信頼を得る生え抜きベテラン選手か、その選手を戦力外とした監督(招き入れたのはクラブだ)のどちらを選ぶかという選択を強いられることとなる。これは非常に困難かつ危険であり、その後の結果によってはフロント陣にも大きな代償が求められることもある。
 
 現在、ベテランの域に入った選手で「1クラブ」を維持している主な例としては、レアル・マドリーのイケル・カシージャス、バルセロナのアンドレス・イニエスタとシャビ、バイエルンのバスティアン・シュバインシュタイガー、そしてローマのフランチェスコ・トッティとダニエレ・デ・ロッシあたりが挙げられるが、彼らのキャリアに2つ目の在籍クラブが加えられる可能性は十分にある。

次ページ添い遂げるか“離婚”か――注目される生え抜きとクラブの関係。

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