「カリスマ社長」退任も…V・ファーレン長崎が来季J1昇格に向けて示した「クラブの変革」と「トップの覚悟」

2019年12月26日 藤原裕久

ジャパネットがクラブ運営に乗り出して2年半がたった

「悔しく厳しいシーズン」と語った今季就任1年目の手倉森監督。写真:滝川敏之

「社長交代」「新強化部長の就任」「長崎では前例のなかった大物外国籍選手の獲得」など、長崎の来季へ向けた動きが活発だ。単にフロントと強化のトップを一新して、J2で12位から立て直そうというのではない。そこには、来年へ向けたクラブの覚悟が込められている。

 2017年の社長就任以来、経営再建に奔走し、カリスマ的な存在でもあった髙田明社長は、「自立経営がなんとかやっていけるところまで来た」として来年1月1日で社長を退任。後任には、クラブの広報・プロモーションを担当している長女の髙田春奈氏が就くことが決まっている。「世界に誇れるクラブにしたい」という思いから、社長就任を決めた春奈氏だが、最初に取り組むべき大きな仕事はクラブをより組織化することだろう。

「実績の高かった父が抜けるにあたり、それをそのまま受け継ぐのは難しい。組織的に対応する体制へのシフトが重要だと思います」

 春奈氏が語るとおり、長崎は営業から広報に至るまで、明社長という強烈な個性に多くを委ねてきた。だが永遠に明社長に頼るわけにはいかない。この個に依存した体制を、組織で対応できる体制へ変革するために、明社長の理念を深く理解している春奈氏が社長に就くのは、自然な流れと言えるだろう。それに明社長がジャパネットたかたの社長を退く際に、ジャパネットホールディングスの髙田旭人社長と共に社内の変革を進めた経験も大きな強みに違いない。

 それでも変革を成功させるのは容易いことではない。ジャパネットがクラブ運営に乗り出して2年半がたった今、地場企業の大手スポンサーは減り、かつて蜜月と言われたサポーターや地元サッカー界との関係性も希薄になったとの声は多い。春奈氏はこういった問題に対処しながら、変革を進めなければならないのだ。

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