クラブW杯はもう日本で開催されないのか? 2年後に生まれ変わる「新大会」から浮かび上がるFIFAの思惑

2019年12月24日 リカルド・セティオン

ヨーロッパ勢にとっては常に重荷

今年のクラブW杯も南米王者フラメンゴを破った欧州王者のリバプールが制覇。大会への関心は薄まっている。(C)Getty Images

 サッカー界の年末の風物詩といえば、バロンドールとインターコンチネンタルカップ、つまりクラブワールドカップだ。トヨタカップと呼ばれていた頃には、取材のために何度も日本に足を運んだものだが、2021年には一年の終わりを告げるこの大会も姿を消してしまう。いや、正確には装いも新たに生まれ変わる。

 まずはその経緯から説明しよう。

 クラブワールドカップの前身、ヨーロッパチャンピオンと南米チャンピオンが対峙するインターコンチネンタルカップは1960年より毎年行われてきた。初期の試合形式はホーム&アウェー戦で、ヨーロッパと南米でそれぞれ1試合ずつ行われるという形がずっととられていた。

 しかし日程調整の難しさと、南米チームの経済的問題から、大会の開催はいつも困難が付きまとった。それを解消するため、80年代にトヨタが大会スポンサーに付き、トヨタの母国であり、ニュートラルな国でもある日本での一発勝負に。「トヨタカップ」と呼ばれるようになる。

 この方式で大会は成功し、20年以上継続された。そうなってくるとFIFAは自分たち自身で大会を開催することを望むようになった。2000年、初めてFIFAの名前を冠したクラブワールドチャンピオンシップがブラジルで行われたが、これは一度きりで中断。その後2005年からトヨタカップと融合する形でFIFAクラブワールドカップが行われるようになった。ヨーロッパ、南米以外の大陸王者も参加できるようになり、開催国は日本、UAE、モロッコ、カタールなどが数年ごとに持ち回りで行っている。
 
 しかし、クラブワールドカップの意義と関心は年を追うごとに薄れてきている。大陸間王者を決める大会と謳っていても、アフリカ、アジア、オセアニア、北中米のチームはどうしても優勝できない。決勝の組み合わせは、ほぼ毎年ヨーロッパ王者対南米王者だ。いくら試合数が増えても、人々が本当に興味を持つのは決勝だけだ。それまではスタジアムも満杯にならず、TVの放映権の買い手もつかない。

 もし欧州勢と南米勢のファイナルにならなければ、それはビッグニュースだろうが、大会とっては痛恨だ。人々は決勝にさえ振り向かなくなるだろう。

 おまけにヨーロッパ勢にとって、この大会は常に重荷だった。大会は彼らのシーズン半ばに行わる。この大会のために、準備し、移動し、プレーすることは、リーグ戦にも響いてくる。一方の南米チームにとっては、リーグが終わってから一週間後という都合のいい時期に行われるのも不満の原因である。

「まったくもって時間の無駄た」

 名将アーセン・ヴェンゲルはこの大会をこう酷評した。

 結局トヨタカップ時代と何も変わらない。いや、一発勝負だった分、トヨタカップの方が簡潔かつ緊張感があってよかったという声もよく聞かれた。

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