昨季王者バイエルンに劇的な逆転勝利! 勝機はボルシアMG監督マルコ・ローゼの「腹を括った」采配にあり【現地発】

2019年12月13日 中野吉之伴

リーグ首位を独走しているボルシアMG

采配で明暗分かれたバイエルンのフリック監督(左)とボルシアMGのローゼ監督(右)。 (C) Getty Images

「同点ゴールのあと、我々はサッカーをすることを忘れてしまった」

 ブンデスリーガ第14節、1-2で逆転負けを喫したボルシアMG戦後の記者会見でバイエルンの監督(年内は続投が決定)であるハンシィ・フリックは、そう敗因を口にしていた。そしてまさにこの点が、両指揮官の采配を探る上でもキーファクターとなる試合だった。

 前半は圧倒的にバイエルンのペースだった。この日、フリックは、前節1-2で敗れたレバークーゼン戦から3つのポジションで選手を変更。右SBはパンジャマン・パバールではなくヨシュア・キミッヒ、中盤にチアゴ・アルカンタラ、そして左FWの位置にはキングスレー・コマンを起用した。

 得に驚きだったのはキミッヒの起用法だ。就任以来ずっとアンカーで起用し、守備ライン前のスペース管理が飛躍的に良くなっていたはずだった。

 ニコ・コバチ前監督のもとでは主力だったチアゴだが、今季はそこまで調子がいいわけではない。フリックは「並外れた才能を持った選手」と称するが、その能力を最大限に生かせていないことが問題だった。この日もアンカーの位置で起用されたが、果たしてここが最適なポジションなのだろうか?

 チアゴのプレーは良くも悪くもリスクが高い。相手守備を崩すためにはそうしたプレーも必要だが、より正確でミスのないプレーが求められるこの位置では不必要なボールロストは命取りになる。

 前半はそこまで、その弱点が目につかなかった。13節終了時でブンデスリーガ首位に立っているボルシアMGは、中盤ひし形の4-4-2でスタート。CBがボールを持つと前からプレスに入り、SBにパスが入る状況を予見してスライドする、そこで数的有利を作ってボールを奪う、真っ向勝負を臨もうとしていた。

 だが、狙い通りに優位を保てない。左サイドではアルフォンソ・ディビスのスピードに翻弄され、右サイドではキミッヒの展開力で押されぎみになる。フリックは試合後、「ボルシアMGはSBに強烈にプレスをかけてくる。キミッヒをそのポジションに置くことで、より多くのオプションを持つことができると思った」と明かした。

 そして、前半は狙い通りの展開になった。

 狙い通りの守備ができないことから、ボルシアMG監督マルコ・ローゼは30分過ぎにシステムを4-2-3-1に変更。まずは守備バランスを整えようとするが、すぐに状況は変わらない。前半こそ何とか無失点でしのいだが、50分にバイエルンが先制点を奪った。

 失点シーンでは、中途半端なプレスを軽くいなされると、飛び出してできたスペースを相手にいいように使われ、DFが建て直す前に、イバン・ペリシッチに左足シュートを叩き込まれた。選手にとって、確信のないプレスは怖くないのだ。

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