【蹴球日本を考える】横浜の大胆な攻撃サッカーはなぜ最後まで衰えなかったのか?

2019年12月09日 熊崎敬

横浜のハイラインは、チアゴの存在をなくしては考えられない

終盤は7連勝で締めくくった横浜。大胆なハイラインを保ったサッカーの勢いは衰えなかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 看板の攻撃サッカーは、最後まで衰えを見せなかった。

 2位・東京との直接対決となった最終節、横浜は3ゴールを決め、シーズン総得点は68に。1試合平均得点はジャスト2点に到達した。J1が34試合制になった2005年以降、1試合2点以上を記録したのは、この横浜で10チーム目となる。

 15年ぶりとなる優勝の主役は、もちろん15ゴールで得点王を分け合った仲川とマルコス・ジュニオール。だが私は、ふたりに匹敵する殊勲者としてCBチアゴ・マルチンスを挙げたい。

 というのも、チアゴ(とGK朴一圭)がいなければ、大胆にハイラインを保つ横浜のサッカーは実現しなかったと思うからだ。
 ハイラインを保てなければ相手ゴールは遠くなり、また選手同士の間隔も広がるため、断続的に攻め続ける試合運びはできなかっただろう。


 横浜のハイラインは、チアゴの存在をなくしては考えられない。
 CBとしての能力は間違いなくJ1屈指。高さ、強さに加えてスピードがあり、空中戦にも地上戦にも強く、前に出てもいいし、後ろで勝負してもいい。
 あらゆる形で勝負できるオールラウンダー。読みも鋭く、奪ってからのフィードや持ち出しも安定している。

 最終節でも1対1を落ち着いて制するシーンが見られたが、その堂々としたプレーにはため息が出た。
 Jリーグで守備にため息が出るのは、いつ以来だろう。少し古いが、イングランド代表のリオ・ファーディナンドを思い出した。立ち姿が美しく、風格が漂っているのだ。
 

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