リアル“南葛SC”の2019年シーズン——つくづく感じさせられた「チームはいきもの」だということ

2019年12月06日 伊藤 亮

前年シーズンと大きく異なった第5節以降の成績

東京都社会人リーグ1部を戦う南葛SC。今季、悲願の関東リーグ昇格はならず、来季再び挑戦することとなる。写真:田中研治

 J7に相当する東京都社会人サッカーリーグ1部にあっても、高い話題性と注目度を放った南葛SCの2019年シーズン。前編ではチームとして今後の成長につながる点を振り返り、来シーズン以降への好材料を見出した。

 後編となる今回は、それでもなぜ「関東リーグ昇格」という目標に届かなかったのか、という点に注目してみたい。

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 2019年シーズンに当企画でインタビューした南葛SCの監督、選手は全部で5人。福西崇史監督、キャプテンの安田晃大、柴村直弥選手兼コーチ、都リーグ3部時代から所属する冨岡大吾そして元日本代表の青木剛だ。初夏から秋にかけて、それぞれのインタビュー時期は異なる。しかし、「今シーズンの東京都社会人サッカーリーグ1部で印象的だった試合は?」という質問に対し、誰もがあるひとつの試合を共通して挙げた。

 その試合とは、第4節の駒澤大学 GIOCO 世田谷戦だ。南葛SCが2019年シーズンで初めて敗れた試合、というのが大きな理由のひとつだろう。

 内容や印象などに関してはこれまでのインタビュー記事を見返していただくとして、その中で冨岡大吾が印象的なことを言っていた。

「昨シーズンも同じタイミングで負けていたと思うのですが、今年は"絶対優勝しなければいけない"シーズンとしてスタートしているので、1敗したことに対して敏感になってしまった部分は大きいかと思います」

 この言葉を受けて、昨シーズンと今シーズンの成績を見比べてみた。

 ともに第4節でシーズン最初の敗戦を喫している。注目したのは第5節以降の成績だ。2018年シーズンは第5節から第14節に引き分けるまで9連勝を記録している。対して2019年シーズンは第5節以降に連勝はなし。だが一方で連敗もしていない。勝ったり負けたりを、引き分けを挟みながら繰り返していたのだ。

 この流れこそが、今シーズンを象徴していたと感じている。

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