戦い方が長続きしない浦和、強化部刷新で今度こそブレないチーム作りを実現できるか? 

2019年11月29日 河野正

監督を巡るドタバタ劇はフロントの目利きや手綱さばきに問題もあるのでは?

ACLではアル・ヒラルに完敗を喫し、今季無冠となった浦和。果たして、来季は新しい強化体制の下で巻き返せるか。写真:徳原隆元

 J1残留争いの渦中にある浦和レッズが11月26日、強化部の体制を刷新する人事を早々と発表。陣頭に立つ新執行部は、業務が広範だった従来のGM職とは一線を画し、トップチーム専従班とも言える役回りを担うことになった。

 Jリーグ創設メンバーの浦和は、純資産15億5700万円、営業費用75億円超を運用する優良クラブだが、チームの成績は乱高下を繰り返し、戦い方が長続きしない欠陥をいまだに解決できないでいる。ここが最大の泣きどころであり、Jリーグの優勝が一度しかないのに、ビッグクラブと祭り上げられ、毎年タイトルを要求されるといういびつな構造を抱えているのだ。


 今回の人事は、そんな悪習に染まったチーム体質にくさびを打ち込むのが大きな狙いだ。このところ監督を巡るドタバタ劇が目に余るが、これは同時にフロントの目利き違いや手綱さばきにも問題があるからではないか。

 2012年に着任したミハイロ・ペトロビッチ監督の功績で、浦和は攻撃的でモダンな型を身に付けたが、17年7月に解任。後任の堀孝史監督とも昨年4月に契約解除し、大槻毅暫定監督を経て鹿島アントラーズで実績のあるオズワルド・オリベイラ監督を招請したものの、今年5月に解任。再び引き継いだ大槻監督はアジア・チャンピオンズリーグこそ準優勝したが、肝心のJリーグは19戦4勝8分け7敗。現在勝点36の13位で、残り2試合に残留を懸けるという低調ぶりだ。

 中村修三GMに代わる統括責任者が、スポーツダイレクター(SD)の土田尚史氏で、補佐役のテクニカルダイレクター(TD)には西野努氏が就任する。ともに浦和OB。01年から昨季までGKコーチだった土田氏は、今季は社長付としてクラブ業務全般を学んだ。01年シーズンで引退した西野氏は、英国・リバプール大で経営学修士(MBA)を取得した博学で、現在は産業能率大学特任教授。SD、TDともトップチーム強化に粉骨砕身する役職だ。

 09年にもOBの信藤健仁氏が、トップチームに特化したチームダイレクターに就いたが、フォルカー・フィンケ監督との確執から1年未満で辞任に追い込まれている。浦和は監督同様、強化責任者の退任や解任が多く、これもブレのない一貫したチーム作りを遅らせた一因だろう。

 トップチームはクラブのシンボルで、ここが輝かなければサポーターや地域の人々は誇りを持てない。土田、西野両氏とも選手として血沸き肉躍る浦和駒場スタジアムでプレーしてきたから織り込み済みだ。

 大槻監督は来季の続投要請を受諾するものと思われる。今季の弱点である失点の多さと得点力不足解消に向け、土田氏はチーム作りの哲学を指揮官と現場に染み込ませ、『速く、激しく、けれん味のない』サッカーをお披露目できるようにリードしてもらいたい。

次ページ「浦和にしかできなことはたくさんある」と力説していた土田氏。かつての守護神に託された使命は大きい

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