もつれにもつれそうなJリーグの優勝争い――最後に勝負を分けるのは?【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2019年11月22日 小宮良之

優勝争いが佳境に入った時、尋常ではない重圧が

前節、首位に返り咲いたFC東京。このまま初のリーグタイトルを勝ち取れるか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

「優勝が決まるのは、最後の7、8試合だ」

 そう語っていたのは、スペインの名将ルイス・アラゴネスだったか。スペイン代表を欧州王者に導いただけでなく、多くの選手に影響を与えてきた指導は、亡くなった後も、その言動がサッカー界で生きる者たちの一つの指針になっている。それほどに、重みがあるのだ。

 優勝争いが佳境に入った時、クラブ全体に得も言われぬ、尋常ではない重圧が襲ってくるという。「身体が動かない」「脚が重い」「いつものプレーができない」。不思議な状態になってしまう。そこで負けを重ねると、抜け出せない悪い連鎖に入り込むことになる。そして、いつの間にか優勝戦線から落ちこぼれる。追われる立場のほうが難しいとも言われる。

 サッカーが「メンタルゲーム」である証左だろう。

 Jリーグでも、最後の最後でリーグ優勝が転ぶことがしばしばある。むしろ、その展開のほうが多いかもしれない。その理由は、各チームの実力・戦力が拮抗していることも関係しているだろう。
 
 例えば昨シーズン、快進撃を続けていたサンフレッチェ広島が終盤になって一気に失速し、一つ引き分けを挟んで7連敗。引き分けを一つ挟んで6連勝した川崎フロンターレに、あっけなく逆転されたケースなどは象徴的と言える。心理面の動きが如実にプレーに出るのだ。

 追われる者は、今まで続けてきた戦いができなくなる。一方で、追う者のほうが失うものがないだけに、勢いはつく。「勢い」の要素は、問答無用に強い。

 それは例えば、J2から昇格したチームがその勢いを利用してJ1でも優勝することにも関係している。2011年の柏レイソル、14年のガンバ大阪、どちらもそうだろう。勝ち癖をつけたチームが、最後まで重圧を感じずに突っ走れるのだ。

 もっとも、欧州のトップリーグで昇格組が優勝するケースはあまりない。例えばスペイン、ラ・リーガで昇格組のマジョルカ、グラナダ、オサスナが優勝する可能性は限りなくゼロだろう。Jリーグはそれだけ実力が伯仲し、"群雄割拠"の状態と言える。
 

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