大量4失点の惨敗を喫した森保ジャパンへなぜ拍手と歓声? ベネズエラ戦のスタンドに抱いた違和感

2019年11月20日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

山口のゴールに感じた虚しさをより強くさせたのは――

ベネズエラの組織力と個々の強さを前に為す術がなかった日本。そんな彼らに対するスタンドの反応は意外なものだった。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[キリンチャレンジカップ]日本代表 1-4 ベネズエラ代表(11月19日/パナソニックスタジアム吹田)

 ホームでベネズエラを迎えた森保ジャパンは、惨敗というべき敗戦を喫した。

 試合は前半開始早々から一方的な展開だった。「我々の選手たちは、素晴らしいチームワークを見せてくれた」と振り返った敵将ラファエル・ドゥダメルの言葉にもあるように、日本はベネズエラのサイドを利した鋭い攻撃を封じきれず。最も警戒すべきだった相手エースのサロモン・ロンドンのハットトリックを含む4ゴールを許した。

 防戦一方だった前半の展開にハーフタイム直前のスタンドからは大きなブーイングが飛んだ。球際で当たり負けをし、不用意なボールロストが悪目立ちしていた選手たちのプレー内容も含め、サポーターたちの反応は至極当然のものだと率直に感じた。

 だが、意外だったのは後半のレスポンスだ。スタンドで目立ったのは、割れんばかりの拍手や黄色い歓声だったからである。

 内容が劇的に改善されたかと言えばそうではない。少なからず持ち直し、69分に山口蛍のゴールで一矢は報いたが、あえて厳しい言い方をすれば、それはベネズエラが守勢に回らずにオープンに挑み続けたからだという見方の方がしっくりとくる。

 ゼロで終わるよりも1点を挙げた方が印象が良いのは確かだ。しかし筆者は、山口の1ゴールに、どこか虚しさを覚えた。それは日本が前半の段階でプライドを切り裂かれるようなゴールラッシュを浴びていたからだ。ゆえに、この得点シーンにおける勝利したかのような大歓声は、「虚しい」という感情をより強くさせた。

 もっと厳しい見方やハーフタイム時の反応を試合後にも続けても良かったのではないだろうか。

 たしかに今回のメンバーは初招集組も含め、キルギス戦から大幅な入れ替えがあり、情状酌量の余地はある。だが、この試合における内容や結果は、あまり「海外ならば」というタラレバは好きではないが、列強国のホームスタンドならば、怒号が飛び交うものだ。

 ましてや、ハットトリックを決めた相手FWが交代する際にホームサポーターたちが拍手を送ることなど皮肉でしかない。少なくとも、筆者が1年を過ごしたことがあるイングランドでは見たことがない。

 常にバッシングをすべきだと言うつもりはない。だが、これから先、日本がより高みを目指していくうえでは、「こんな試合をしてはダメだ」とハッキリと表現するピッチ外からのよりシビアな反応も必要だ。そうして、緊張感やプレッシャーのある環境で戦うことでこそ、チームは進化していくのである。

取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)
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