「まだ“こういうチームにいる”というのが悔しい…」浅野拓磨が強敵マンU戦後に漏らした本音【現地発】

2019年11月12日 松澤浩三

ようやく巡ってきた“イングランド・デビュー”

ユナイテッドとの激闘は浅野にとって刺激になると同時に自身の現状を痛感させられるものとなった。 (C) Getty Images

 浅野拓磨のアーセナル移籍が発表されたのは2016年夏のことだった。

 その直後にクラブの広報担当者に入団記者会見について問い合わせたが、しばらく返答はなく、最終的に連絡があった際には、「現在その予定はない」といった内容のメールでの返信のみに終わっていた。

 結局、その後、浅野を取材する機会は残念ながら一度も巡ってこなかった。なぜなら、彼がガンナーズの一員として赤と白のシャツを身に着けてピッチに上がることが一度もなかったからだ。

 それからおよそ3年。25歳になった日本代表FWは、イングランド、すなわち「フットボールの聖地」でようやくデビューを飾った。浅野が纏っていたのは、セルビアの名門パルチザン・ベオグラードの黒と白の縦縞のユニホームだった。

 11月7日(現地時間)に行なわれたヨーロッパリーグ(EL)のグループリーグ第4節、マンチェスター・ユナイテッド戦に挑んだのである。

 浅野のプレーを間近で見るのは初めてだった。ベオグラード開催だった第3節はテレビ観戦したとはいえ、正直なところ、普段は日本代表でプレーする姿をテレビでたまに見かける程度だった。

 そして、オールド・トラフォードの記者席から見た浅野についての率直な感想は、"可能性を感じさせる選手"だった。

 最も目に付いたのは、やはりスピードだ。カウンターを繰り出した19分の場面では、自陣から快足を飛ばして一気に加速すると、あっという間にDFを突き放して前線へ抜けた。最終的に味方MFからのパスの精度が低く得点機はつくれなかったが、その脚力は相手の脅威となり、後半も右サイドでマーカーを振り切る場面も見られた。

 この点については浅野本人も自負している。試合後には、「自分の強みっていうのは、特に今日みたいな試合だと、何も見せられないなかで、ああいうところで負けないところ」と述べている。

 さらにポジショニングセンスの高さも感じさせた。スペースを見つけては、そこへするりと入り込んで、味方からのパスを待つ場面が数回あった。しかし、残念ながらボールホルダーがその動きを見ていなかったり、あっさりとボールを取られてしまったりと、タイミングが合わず、決定機を作り出すまでには至らなかった。。

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