「世代交代」のブレ――波に乗りきれないスペイン3強が抱えるそれぞれの事情【現地発】

2019年10月29日 エル・パイス紙

三者三様にプロジェクトの旗頭を

(上から)バルサ、マドリー、アトレティコのリーガ3強は今シーズン、精彩を欠く試合も少なくない。(C)Getty Images

 近年、レアル・マドリー、バルセロナ、アトレティコ・マドリーのスペイン3強はそれぞれ隆盛を極めてきた。一方の繁栄が他方の衰退に繋がることが通例の勝負の世界において、覇権を争う3つのクラブが同時に上昇気流に乗ることは極めて異例の事態と言っていい。

 2強時代を形成していたバルサとマドリーに、長く低迷していたアトレティコが割り込んだことが3強時代の到来を促す形となった。

 特筆に値するのは、それぞれがカラーを持っていたことだ。バルサは長年築き上げてきた独自のフットボールスタイルというグループの力で頂点を勝ち取れば、マドリーは莫大な資金を元手にかき集めたスター選手たちによる共演という個性の結集で強さを誇示した。アトレティコをトップクラブに押し上げたのは、言うまでもなくディエゴ・シメオネ監督が提唱した勝者の哲学だ。

 さらにバルサがリオネル・メッシ、マドリーがクリスチアーノ・ロナウド、アトレティコが指揮官のフットボールを盲目的に信奉するシメオネ・チルドレンと三者三様にプロジェクトの旗頭を抱えていたのも強さの秘訣だった。

 しかしいまそのそれぞれがひとつの時代を終え、世代交代の時期を迎えている。
 
 まずバルサは、確実に迫りくるポスト・メッシ時代を見据えて、そのエースが健在ぶりを示す間での若手への切り替えに着手している。一方、昨夏C・ロナウドが退団したマドリーはエース離脱がもたらすダメージの大きさをいち早く経験。1年以上が経過した今も大黒柱の不在に喘ぎ続けている。

 そしてアトレティコは、今夏にディエゴ・ゴディン、ファンフラン、フィリペ・ルイスという重鎮組が揃って退団。1年前に退団したガビも含めて、いずれもシメオネ哲学を率先して体現し続けてきた絶対的なリーダーで、その貢献はフットボール面だけにとどまらず、モチベーションやメンタル面にも及んだ。エモーショナルな部分を何よりも重視するシメオネのフットボールにおいてその存在は絶大で、否応なく後継者探しを余儀なくされることとなった。
 

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