【ルヴァンカップ決勝】浮足立った2年前のファイナルとは違った。川崎の勝因はズバリ…

2019年10月27日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

川崎の良さを引き出してくれた“札幌のスタンス”

途中出場でルヴァンカップ制覇を果たした中村。写真:サッカーダイジェスト

ルヴァンカップ決勝/川崎3(PK5-4)3札幌/埼玉スタジアム2002

 川崎の中村曰く、今回のファイナルが近年稀に見る好勝負になった一因は札幌のスタンスにあった。

「ファイナルで3-3というスコアはあまりありません。ミシャ(札幌のペトロヴィッチ監督)サッカー哲学が(川崎の力を)引き出してくれたところがかなりあります。実際、攻撃的な試合でしたし。札幌は1点取ったあとにベタ引きする選択肢もあったと思いますが、出る時は出てきたので。サポーターを含めすごく良い雰囲気も作ってくれたし、感謝したいです」

 確かに両チームが持ち味の攻撃力を遺憾なく発揮した試合だった。川崎が素晴らしかったのは、延長前半6分に谷口を退場処分(チャナティップへの反則により)で失っても数的不利を感じさせなかった点だろう。

「(大島)僚太に代わって(延長10分から)入ったマギーニョが運動量を生かしてカバーしてくれたのは大きかった。特にサイドのエリアを。(谷口)彰悟がいなくなって最終ラインがひとり少ない状態だけど、後ろの選手も無理して行かないといけない。でも、行き過ぎると穴があくし、どこから、どう攻めるかというのは考えながらやっていた。皆(体力的に)きつそうなところもあったので、とりあえず元気な(長谷川)竜也とマギーニョを使って推進力を出してもらおうと思いました」

 決して無理はしないが、リスクを冒すべき局面では長谷川やマギーニョの推進力を活用して攻める。その戦い方が奏功して、押し込まれるような展開にはならなかった。そして延長後半4分、中村のCKから最後は小林が押し込んで同点に追いつく。

「ひとり少ないからこそセットプレーは大事だし、あの時の迫力と集中力はすごく良いものがあった。10人になってからの戦い方の常とう手段ではないですが、守ってセットプレーというのは選択せざるを得ない時もあります」
 
 2-3の局面で先に失点したら終わり。そうした崖っぷちに追い込まれながらも川崎は焦れずにチャンスを窺い、流れの中からなかなか崩せなくても集中力を切らすことなく、アグレッシブに戦った。その結果、セットプレーという好機を得て、それを見事にゴールへと結び付けたのだ。そこには、2年前のルヴァンカップ決勝であっさりC大阪に敗れた川崎の姿はなかった。中村は語る。

「2年前は開始1分で失点して、浮き足だってしまった部分が間違いなくあった。でも、今回も前半10分に先制されましたが、中盤の選手がボールを回してチャンスを作れていたので、途中からは『ひとつゴールが決まればいけるんじゃない』という空気感はあった。2年前とは違ってタフさは身に付いたと思います。それは、この2年間でリーグ連覇をしたり、ACLで悔しい想いをしたりして得たものでしょう」

 PK戦を含め目まぐるしい展開だった札幌とのルヴァンカップ決勝だが、どの局面でも川崎は「慌てなかった」(中村)という。札幌の攻撃的なスタンスに面を食らわず、幾多のピンチを乗り越え、最終的に栄冠を勝ち獲れたのは──。その勝因はズバリ、"平常心"にあった。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
 
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