【ルヴァン杯決勝】右足首の負傷、ベンチスタート…苦難を乗り越え大一番で輝いた小林悠の魂の咆哮

2019年10月27日 本田健介(サッカーダイジェスト)

大一番はベンチスタートになるも…

ルヴァンカップ優勝の立役者となった小林。札幌戦では2ゴールの活躍を見せた。写真:田中研治

[ルヴァンカップ決勝]札幌3(4PK5)3川崎/10月26日/埼玉スタジアム2002

 札幌との決勝でチームの窮地を救ったのは頼れるエースストライカーだった。

 2年前の光景は今も脳裏にこびりついていた。リーグ戦では好調をキープし、川崎有利と目されていたC大阪とのルヴァンカップ決勝。しかし、試合開始直後に失点を喫すると、1トップで先発した小林悠も最後まで本来の力を示せずに0-2で敗れた。かつて川崎でコンビを組んだ経験があり、この試合で先制点を奪った杉本健勇らが歓喜する姿を、ただ呆然と見守るしかなかった。

 あれからチームはリーグ連覇を達成し、頂点に立つ喜びを覚えた。それでもカップ戦の優勝経験はなし。愛するクラブを頂点に導きたいという想いは誰よりも強かった。
 
 しかし、大一番を前にした10月20日、アクシデントに見舞われる。練習試合で右足首を痛めてしまったのだ。「どうしてこんな時に…」ショックは隠しきれなかった。

 それでもエース、そしてキャプテンとしての意地がある。翌日から練習に参加しながら足首の回復を目指し、出席した前日会見では「練習自体は出られているのでまったく問題ありません」と怪我の影響をキッパリ否定。

 ただし、札幌との一戦に向けたスターティングメンバーに名前は記されず、ベンチからのスタート。「そりゃ悔しかったです。やっぱりスタートからいきたかった」と本心を語るも、「右足首のことがなくとも(レギュラーを争うレアンドロ・)ダミアンが先発かなと思った」と自らの出番を冷静に待った。

 振り返ると元ブラジル代表FWレアンドロ・ダミアンが加入した今季は、例年以上に苦難の多いシーズンだった。開幕当初は4-2-3-1の右サイドハーフで起用されたが、持ち前の得点力を発揮できる機会が減少。チームのために割り切ろうとする想いと、ストライカーとしてのプライドが、葛藤として心の中で渦巻いた。

 その後は鬼木監督との話し合いもあり、CFとしての出場機会が増える。しかし、今度は夏場のチームの不調もあり、なかなかゴール数を伸ばせない日々が続いた。

 

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