元鹿島・青木剛が感じた社会人リーグの現実「南葛SCではサッカーを続けられていることに対する感謝が大きかった」

2019年10月29日 伊藤 亮

「みんなサッカーが好きなんだな、というのがすごく伝わってきました」

インタビューに応じてくれた青木。初挑戦となった社会人リーグの印象について語った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 漫画『キャプテン翼』の原作者、高橋陽一氏が代表を務めるリアル"南葛SC"の2019年シーズンは、2つの大きなトピックスで幕を開けた。

 ひとつは元日本代表の福西崇史氏の新監督就任。そしてもうひとつが"常勝"鹿島アントラーズの主力としてJ1優勝4回、天皇杯優勝2回など、数多くのタイトル獲得に貢献した実績を持つ青木剛の加入だ。

 鹿島、鳥栖とJ1で400試合の出場記録を誇る大物の加入に、南葛SCサポーターの期待は否が応にも高まった。

 そんな青木が東京都社会人サッカーリーグ1部を1シーズン戦い抜いて感じたこととは――。Jリーグと社会人リーグ、プロとアマチュア……、2019年シーズンを豊富な経験と照らし合わせることで自分と、そして南葛SCの現在地が明確になる。3回特集の第1回では、彼個人の今シーズンについて振り返ってもらった。

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 J1の鹿島アントラーズで15年半、サガン鳥栖で1年半、そしてJ2のロアッソ熊本で1年。18年間Jリーグでプレーしてきた者にとって、社会人リーグの東京都1部リーグでの1年は刺激に満ちた1年だった。

「自分でいうのもなんですが、僕はどちらかというと下の年代の選手からもいじられるキャラで(笑)。だからチームにはすんなり入れたと思いますし、刺激を受けることが多かったです。社会人チームはみんな仕事をしながら、練習場まで1時間以上かけて集合してサッカーをする。みんなサッカーが好きなんだな、というのがすごく伝わってきました。こういうサッカーへの取り組みもあるんだと思って」

 鹿島でも鳥栖でも熊本でも、練習場から5~10分ほどの近い場所に居を構え、サッカーに打ち込んできた青木も、南葛SCでは鹿嶋市内に開業したスパイクのインソール専門店「アシスタート」の仕事があるため、鹿嶋から葛飾まで1時間半ほど車で移動して練習場に通った。

「Jリーグの選手は――意識が高い選手は勉強などしていますが――サッカーがメインで他に仕事もしていないですし、空いた時間は身体のケアなどに費やしたりと自由な時間が多いんです。でも社会人リーグの選手は日中仕事をして夜練習して、夜中に寝て翌朝早く起きて仕事に行って、また夜練習する。本当にタフだな、と。練習に関して南葛は恵まれている方だと聞きますが、他のチームでは練習が週1回とか、試合日だけ来る選手もいると聞きます。そこまでしてサッカーをやるのは、仕事のリフレッシュなどもあるのかもしれませんが、やっぱりサッカーが好きなんだな、と」

 周囲からの期待も感じていた。しかし、それよりも強く感じていた他の気持ちがあったという。
「最初から基準が"Jリーグを何年も経験してきた選手"という見方をされるとは思っていましたし、分かっていました。ですから練習をしていても下手なプレーは見せられないですし、試合中も相手が僕からボールを奪った時に盛り上がったりといった反応もありました。たしかに今までやってきたものがある、といういい意味でのプライドはありますし、カテゴリが変わっても勝ちたいという気持ちに変化はありません。ただ、それよりも自分は前年の熊本でのシーズンが終わった時に辞めるか辞めないかってところまで悩んだので、南葛でサッカーを続けられていることに対する感謝の方が大きくて、周囲の目を気にするということはなかったんです」

次ページ「最初の頃は練習でも試合でも、一つひとつ感覚を思い出すようにかなり研ぎ澄ましながらやってたんです」

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