“神様”が存在感を示し、19歳新星が魅了!負傷者続出の西野タイランドはいかにして強敵UAEを破ったのか?

2019年10月17日 佐々木裕介

ティーラシンが与えた安心感と新星の活躍

オランダの名将ファン・マルバイク監督率いるUAEを破ったタイ。西野監督が早くも辣腕を振るっている。(C) Getty Images

 カタール・ワールドカップ・アジア2次予選、"同組最強"と目されるUAE代表をホームに迎えたタイ代表は、その"決戦"5日前にコンゴ代表を招いてテストマッチを組んだのだが、開始前から緊張が走る。スタメンに名を連ねていたDFティーラトン(横浜F・マリノス)が、アップ中にチームメイトとの接触で倒れ込んで動けなくなってしまったのだ。


"タイ人J三銃士"、チャナティップ(北海道コンサドーレ札幌)は辞退、ティティパン(大分トリニータ)は招集外、ともに怪我が理由で合流できていない事態にティーラトンまでもが、とスタジアムの空気が凍り付いたことは言うまでもない。結局、彼は出場を回避したのだった。

 そんなチームを"本番"となるUAE戦で救ったのは、やはり"エース"だった。

 UAE戦の前日会見、西野監督が「打撲の影響でコンゴ戦は回避したが、すでに通常練習に参加している」とティーラトンの状況を説明、UAE戦の戦列には復帰した。しかし今予選でセンターバックを張ってきたDFパンサーも怪我、ボランチが本職のMFタナブーンが一列下がった"急造"CBコンビで迎えた試合、勇気を与えたのはFWティーラシンだった。

 25分、MFエカニットのお洒落なクロスを頭で合わせて先制に成功。コンゴ戦に続いての連発だ。ベストメンバーを組めないチームに、また前線を張る若手メンバーにも"神様"が安心感を与えたことは誰の目にも明らかだった。代表復帰を結果で示してみせる、これぞエースの存在感である。
 しかし……その歓喜もつかの間、前半アディショナルタイムにUAEに追いつかれてしまう。DFアルハッサンのクロスをFWマブフートが合わせて同点。"UAEのエース"も黙ってはいなかった。

 だが、タイも"リトル・チャナティップ"と呼び声高き新星が存在感を見せる。

 前節アウェー・インドネシア戦のMFスパチョークに続き、この日もヤング世代の活躍があった。51分、DFニティポーンのクロスに19歳MFエカニットが合わせてUAEを引き離す。前半終了間際の失点による嫌流を払拭する活躍ぶりだ。以後、本調子ではないMFアマールが唯一の起点となったUAEの無策にも助けられ、タイがこのまま逃げ切ってグループ首位に浮上した。1ゴール・1アシストの活躍で魅せたエカニット・パンヤーは、マン・オブ・ザ・マッチに選出されている。

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