いまだチーム一の走力を誇る佐藤勇人はなぜ現役を辞めるのか?「2メートルくらいの」恩師、「後悔しかない」キャリアへの想いとは…

2019年10月17日 赤沼圭子

「J1昇格を狙える順位にいたら、この引退発表はしなかったと思う」

今季限りでの現役引退を発表した佐藤勇。写真:赤沼圭子

 千葉のバンディエラがユニホームを脱ぐ決意を固め、その思いを語った。

 10月13日に今季限りでの現役引退をクラブから発表した佐藤勇人が、16日にクラブハウスで会見を行なった。自分が愛するジェフというクラブの未来を考え、ジェフをJ1に戻すために京都から戻ってきたが、すでに10年目という長い時間が過ぎてしまったことで、今季の開幕前から考えていたことがあったという。

「自分の中で決めていたのは、シーズンの半分が終わる時にチームがどの場所にいるか、それがすべてかなと。それが自分の最後の価値ではないですけど、それで決めようと思っていました。J1昇格を狙える順位やいい位置にいたら、この引退発表はしなかったと思います。自分なりのけじめですね。『1年でジェフをJ1に戻す』とかっこいいことを言って戻ってきた自分が、10年も上げることができなくて、来季もJ2で戦うことはできない。やはりクラブとして次の時代に進まなくてはいけない。そのためには、10年かけてJ1に上がれなかった、その時にずっといた自分は、次の11年目からは次の選手に託すべきだと思いました」
 
 20節・町田戦終了後、千葉は18位だった。J1昇格は難しい位置にいることで決断し、現役引退をみんなに伝えたいとクラブに話した。

「成績のよくないチームに何かサプライズ、変化が必要だと自分は考えていました。みんなの前で『自分はユニホームを脱ぐ』という話をして、その変化で何か変わればいいと思ったんですけど、クラブとしては少し待ってほしいという返事でした。このタイミングになったのは、今のチームの苦しい状況やクラブとして絶対にJ2に残留したいということがあったからです」
 
 2日に選手やクラブスタッフの前で発表したが、妻、そして双子の弟の寿人に最初に話をした時には「まだやれる。誰よりも走っている。やめる意味が分からない」というような言葉がかけられたという。それでも決意は変わらなかった。その根底には彼なりの『走る』ことへの思いがあった。
 
「自分としては、試合に出たら誰よりも走れているし、毎日のトレーニングでも誰よりも走って、誰よりも闘えている。その状態で引退するという意味を、残った選手に感じてほしかった。これは選手としての責任だと思います。このクラブが今年、こういう順位になってしまっていることには、一人ひとりが責任を感じなければいけないと思います」
 

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