ブラジル4部から一気に飛躍! アーセナルが引き抜いた18歳の“隠れた俊英”/マルチネッリ【プレミア逸材名鑑】

2019年10月19日 内藤秀明

バルサやマンCも興味を示す

ブラジルの4部クラブから世界的な名門アーセナルに加わったマルチネッリ。その存在を追った。 (C) Getty Images

 アーセナルは今夏に獲得した"隠れた逸材"が、18歳のブラジル人FWガブリエウ・マルチネッリだ。ブラジル4部のイトゥアーノからやってきたということもあり、ファンやメディアからすれば、正直、聞いたことがない名前だった。実際、SNSでは「マルチネッリって誰だ?」というコメントが乱立した。

 しかし、この若きブラジル人は、加入してすぐに自身の価値を証明した。フル出場したカラバオ・カップやヨーロッパリーグ(EL)で、2試合で4ゴール・1アシストを記録して、鮮烈な印象を残している。

 一体、マルチネッリはこれまでにどんな道を歩んできたのか――。

 9歳から所属していたコリンチャンスのフットサルチームを離れて、14歳でブラジル4部のイトゥアーノに加入したマルチネッリは、わずか16歳でトップチームに辿り着く。

 昨シーズンのサンパウロ州選手権では、17歳ながら主軸を担い、14試合に出場して、チーム最多の6ゴールを記録。大会の新人賞を手にするとともに、ベストイレブンにも選出された。

 イトゥラーノは決して世界的な知名度を誇るクラブではない。だが、この若者にとっては最適だった。というのも、クラブ幹部を務める元ブラジル代表MFのジュニーニョ・パウリスタ氏が良き理解者として傍らにいたからだ。

 若手育成において、フィジカル強化を重視するようになってきた風潮がある昨今のブラジル・サッカー界で、ジュニーニョはクラブの方針として技術の習熟に重きを置いていた。これがフットサル上がりのマルチネッリの成長を促進させた。

 プレミアリーグのミドルスブラでもプレーしていたジュニーニョは、各国クラブのスカウトからの誘いを受けるようになったマルチネッリの移籍に関する相談にも乗り、最適なキャリアを模索していたという。

 良きサポート役の存在もあり、順調に力を伸ばしていったマルチネッリの成長を欧州のメガクラブが見逃すはずがなかった。米メディア『ESPN』のブラジル版によると、バルセロナの練習施設にも招待されていたという。

 なかでも、最も大きな関心を寄せたのは、マンチェスター・ユナイテッドだった。15歳から17歳の間に4回も練習場に招待され、現在トップチームに所属するメイソン・グリーンウッドとともにアカデミーの親善試合に出場したこともあった。

 しかし、最終的にマルチネッリを射止めたのは、アーセナルだった。若手獲得と育成に定評のあるノースロンドンのクラブは、元ブラジル代表MFエドゥがテクニカルダイレクターに就任する以前から注意深く観察。数か月に一度はスカウトをブラジルに滞在させ、詳細なデータベースを作成していた。

 一見すると、今夏に補強関連の要職に就任したエドゥが自身のコネクションを活かし、無名の若手を引き抜いただけにも見えたが、マルチネッリの獲得はアーセナルが周到に準備を進めていた確信を持った補強だったのだ。

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