【名古屋】イタリア人指揮官の“集中講義”は何をもたらすか?監督交代から2週間で明確になった課題と収穫

2019年10月06日 今井雄一朗

戦術理解の浸透はメンバー交代など采配にも現われている!?

名古屋のフィッカデンティ新監督。就任後、2戦2分けだが、代表ウィークによる中断明けが勝負どころとなる。(C) SOCCER DIGEST

 フィッカデンティ監督就任から2週間で二度の実戦を経て、この"新チーム"の課題と収穫は非常に明確になってきている。しかも、それらは実にシンプルだ。課題はどうやって勝つか、収穫はチームの構築が着実に進んでいることである。2戦連続で追いつく形になった1-1というスコアは、その点での良い研究材料にもなってくる。


 すべてが手探りだった1週間前の広島戦に比べ、名古屋の動きは確実に進歩していた。和泉竜司がベンチスタートとなり、長谷川アーリアジャスールがスタメンに起用されても連係力は落ちるどころか緊密さを増していると感じられるほどだった。大分の戦い方を緻密に解析し、対策を立てたうえで自分たちのアドバンテージも明確にして進めてきた準備は、確かな効果を発揮していたと言える。

 大分の前半のシュート数はわずかに1本。それほど積極的に攻撃を仕掛けてくるチームでないことを差し引いても、名古屋の守備がはまっていたことは明らかだった。前節では奪ったボールをやや放り込みすぎたという反省から、ポゼッションで押し込む時間帯も作れており、サイドバックの吉田豊らが深い位置でゴール前に折り返す厚みのある攻撃も今日は見られたほどだ。

 ただ、この日は10月にもかかわらず飲水タイムが用意されるほどの暑さもあって、両チームの動きはやや鈍かったのも間違いない。名古屋も自陣でうまくボールを奪うことはできていても、狙っていた速攻の形にフォローが追いつかず、決定機の数は思うように増えていかなかった。それでも後半は温存していた体力を使ったからかスコアが動き、大分は両ウイングバックが絡む攻撃で先制点を奪ってもいる。またも追う展開となった名古屋はそこから赤崎秀平、終盤にもエドゥアルド・ネットを起用する攻撃的な采配を繰り出したが、そのメッセージ性のある交代策を実らせたのも収穫の一つと言えるだろう。
 
 
 前節は交代そのものがバタバタし、結局赤崎のみを起用するに留まった。チームのバランスを考えての措置だったのは明らかで、3枚が交代させられるようになったと言うとレベルが低く感じられるかもしれないが、2週目にしてメンバーの戦術理解度が上がったと捉えればこれはポジティブな変化と考えられる。
 
 しかも今節においてはその交代策が勝点を生むことになったのだから、やはり収穫である。組織の殻を一時的に破って飛び出した中谷進之介のガッツあるプレーから生まれた同点弾への流れは、ネットのクロスを赤崎が頭で捻じ込んでフィニッシュの時を見た。ビハインドを背負っての試合展開はそれだけでチームに攻撃性を前面に押し出させるものだが、指揮官がそこに攻撃的な采配を見せることで迷いはさらに振り切れる。そのメッセージのやり取りができたことは、今後のチーム作りにも良い影響を及ぼすに違いない。
 

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