「諦めるような奴はもうチームに来るな!」長崎・手倉森監督が痛恨の敗戦後に語った想い

2019年09月30日 藤原裕久

「導火線に火を点ける試合」と意気込んだが…

リオ五輪代表を率いたことでも知られる手倉森監督。就任1年目で長崎を昇格に導けるか。写真:滝川敏之

 第34節の大宮戦、0-3で試合終了のホイッスルが鳴った時、敗れた長崎の選手たちの反応は一様に静かなものだった。激高する者もいなければ、打ちのめされたような様子を見せる者もいない。だが一人一人の表情には隠しようのない悔しさが感じられる。それほど、長崎はこのゲームに懸けていた。

 1年でのJ1復帰を目標掲げた長崎だったが、スタイルの変化、ルヴァン杯によるタイトな日程などもあり、リーグ序盤から予想外の苦戦が続いた。ときにはスタンドから厳しい声がチームに浴びせられたこともあった。それでも補強、継続、変化……あらゆる手立てを尽くしながら修正を繰り返し、大宮戦の前には4勝1分けの5試合負け無しを記録。一度は消えたかに見えたJ1昇格の可能性を、再び復活させるところまで来ていた。

「5戦無敗でも順位が上がっていないんだけど、大宮戦で勝点3を取れば昇格レースは大きく動き出す。そのための導火線に火を点ける試合」

 手倉森誠監督は大宮戦をそう位置付けていた。その想いの強さは0-1とリードされて迎えたハーフタイムの「逆転して帰る。逆転の長崎を印象付ける」という言葉にも現われていた。
 
 だがこの日の大宮は今季最高とも言えるゲームで、長崎の想いを弾き返し続けた。連動した前線からのプレス、当たりの強さ、球際、何より5-4-1で組んだブロックの堅さは目を見張った。パスを通すスペースを見つけられないカイオが、前半途中でベンチに、DFの背後を狙うボールを増やすように要請したが、「裏のスペースも、中央のスペースもほぼなかった」(角田誠)という状態で、決定的な崩しのパスを入れることはできなかった。

 得点ランクのトップタイに立つ呉屋大翔を軸としたカウンターも、大宮の3バックに早めの対処をされ沈黙。長崎は16分に喫した失点を返すどころか、72分と82分にも追加点を奪われ、終了のホイッスルを聞くことになったのである。

 大宮戦に敗れた長崎の成績は15勝14敗5分の勝点50。2位との勝点差は10となり、J1昇格プレーオフ出場圏となる6位との勝点差は7。残り試合数が8であることを考えれば、1年でのJ1昇格は極めて厳しいと言わざるを得ない。大宮に敗れた代償は余りにも大きい。

 さらに来月からは練習場がオーバーシード期間に入るため、約1か月間、連続でミニキャンプが入る予定だという。だが試合後の手倉森監督は、そうした苦しい状況を吹き飛ばすかのように、選手たちにこう話したという。

次ページその目にはまだ諦めないという指揮官の強い意志が

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