【セルジオ越後】VAR導入はメリットばかりではない。レフェリングの質が落ちるリスクすらある

2019年10月01日 連載・コラム

VARを導入するのは必然だった

来季からJ1の全試合でVARシステムが導入される。今季はすでにルヴァンカップで採用されている。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 来季のJ1リーグでVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されることが決まった。世界的にも大きな国際大会やトップリーグにはすでに取り入れられていて、その潮流に乗った形だ。

 ベルマーレ対レッズの"ノーゴール判定"をはじめ、Jリーグでは連日いろいろな誤審が引っ切り無しに取り上げられているよね。そうしたジャッジミスが何度も報道されることによって、サッカーのイメージはマイナスになってしまう。これはサッカーだけでなく、野球など他のスポーツにも言えるけれど、判定の権利を持っているレフェリーや大会組織の落ち度というのは、そのリーグ全体のイメージダウンにつながってしまうんだ。

 だから、たとえ多くの費用がかかったとしてもVARを導入するのは必然だったし、2021年シーズンからの導入予定を1年前倒しにした判断も、当たり前だったと言えるのではないかな。早急にリーグ全体の印象を回復が求められるんだ。
 
 ただし導入されるのがJ1だけというのは腑に落ちないね(編集部・注/来季VARが導入されるのは、J1、ルヴァンカップのノックアウトステージ、J1参入プレーオフ決定戦、リーグ王者と天皇杯王者が対戦するスーパーカップの計321試合。J2とJ3では導入されない)。予算の問題はあるのだろうけど、結局は最も経済的な効果がある部分にだけ気を遣っているように思えてしまう。これでは、J2やJ3の選手は浮かばれないよね。他の国もトップカテゴリーだけのようだけど、リーグ全体の基準を明確にするためには、各カテゴリーで同じように取り入れるべきなのではないかな。
 
 また最先端のテクノロジーを駆使したVARも、良いところばかりではない。デメリットも理解しないといけないよ。
 
 ひとつは、レフェリーの価値が下がってしまうかもしれないということだ。ジャッジミスをしても、映像を振り返って訂正すればいいから、レフェリーからしたら気が楽だよね。厳しさが失われてしまうし、そこまで技術が問われなくなるだろう。「結局は映像頼みじゃないか」とか、「スローで何回も見れば誰でもできるよ」などと言われてしまってもおかしくはないよ。
 

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