【山口】守りに徹しない“現実策”。人材流出は痛手も霜田監督が見せた新たな引き出し

2019年09月19日 上田真之介

29節からは3連敗を喫するも…

主力選手の移籍などで苦しむ山口。それでもスタイルは曲げずに戦い続けている。(C)RENOFA YAMAGUCHI

 今季はウイングやウイングバックで戦える人材の流出が相次いでいる山口。昨季も小野瀬康介がG大阪へ移籍した夏以降、サイドでどのように戦うかが課題のひとつになったが、今季もシーズン途中に瀬川和樹が栃木に移籍し、さらには高木大輔もG大阪へと巣立った。
 
 シーズン序盤から大量失点が続いていた山口は、4月末からシステムを3-4-3に変更。ウイングバックの運動量を活かしてサイドの攻防で勝り、16節の水戸戦以降は6試合負けなしと立て直した。その後は力負けする試合があったものの、エンジンを再始動した山口にとって瀬川や高木の移籍は大きな痛手となった。
 
 試練を乗り越える一手として、28節の甲府戦から最終ラインを4枚にした4-1-2-3や4-2-1-3に再変更。G大阪から迎えた高宇洋をアンカーに、ゲームメーカーの三幸秀稔をシャドーの位置まで上げて、中央のラインを強化した。
 
 ところが前述の甲府戦では勝利したものの、翌節からは自陣でのパスミスからショートカウンターを受けるなど自滅的な3連敗。U-22日本代表の北中米遠征などで高が不在だったとはいえ29節の長崎戦と31節の東京V戦ではともに4失点の大敗を喫した。点も取れず、失点だけが嵩む。万策尽きたのか――。にわかに暗雲が立ちこめた。
 
 これ以上の敗戦は許されない中で迎えた32節の愛媛戦。得点と失点のバランスを考えれば守備偏重の現実策を取るのがセオリーではあるが、指揮官は戦い方もフォーメーションも堅持し、選手の顔ぶれに手を加えた。すなわち、出場停止者が出たCBに前貴之、右ウイングには「ボールを受けた時に決定的な形を作れる」と評価する池上丈二を配置。三幸にも変わらずに高い位置でのタスクを与えた。
 
 すると三幸と池上を高い位置に配置する布陣が奏功。試合序盤から相手陣内でサッカーを展開し、三幸と山下敬大のゴールで2点のリードを得た。試合終盤は「後ろを3枚にして、ウイングバックを落とした5バックのようにしたほうが良いのではないか」(高)というピッチ内の判断を尊重し、残り15分こそ守備に重心を置いたが、2-1で逃げ切っている。
 

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