【松本山雅FC】反町康治インタビュー “語録”で振り返るJ1昇格の軌跡

2014年12月02日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「理想を追い詰めていたら監督業は難しい」

自身のインタビューページを見ながら質問に答えてくれた反町監督。就任3年目で松本をJ1に導いた。(C) SOCCER DIGEST

 自身3度目となるJ1昇格はいかにして成し遂げられたか――。12年の監督就任から『週刊サッカーダイジェスト』誌で掲載したインタビューをもとに、印象的なフレーズを抜き出し、それを発した本人にぶつけて、わずか3年で悲願成就へと導いた道のりを振り返る。
(『週刊サッカーダイジェスト』 2014年12月9日号より)
 
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「毎日痛いよ。オフになっても痛むってことは、もうずっと続くんだろうなって覚悟したよ」2012年1月31日号掲載
――本誌での監督就任後初インタビューで、「胃が痛くなる時はどんな時ですか?」という質問に対して、こう答えていました。
「でも、今年はわりと順調に行っていたから、これまでと比べれば、そこまで痛くならなかった。本当は、この時期になると、なぜだか知らないがよく咳が出てくるんだ。おそらく何かのアレルギーなんだろうけど、でも今年は出ていない。そういう体調の変化を見ても、順風満帆だったのかもしれないな」
 
「何度もクビを切られてきた選手がほとんどだ。でも、だからなにもできないってわけじゃない。だからこそ、できることだってあるんだ。その力を見出して、引き出すのが、俺の仕事になる」2012年1月31日号掲載
――松本を指揮するにあたり、戦力を見極めたうえで、何をすべきかは明確だったのでしょうか?
「理想を追い詰めていたら監督業は難しい。結局、現実を見て、そのなかでやっていくしかない。そのためには相手の分析よりも、自分のチームを分析することが一番大事なんだ。まず観察する。オフィシャルなゲームをやりながらでも、発見はたくさんある。1年目の最初、船山はほとんど出ていない。でもそういう選手にも秘めているものがある。それを活かさないと。選手が持っている良さを出さなければ、チームは崩壊してしまうから」
 
「5日掛かるところを3日でやる。そうやってどんどん蓄積しないと他クラブには追い付けない」2012年1月31日号掲載
――かなり駆け足でチーム作りを進めていたのでしょうか?
「このシーンだ、っていうのを4つ見せるより、ひとつ見せて伝わる映像を使ったほうがいいわけだ。マグネットよりもパワーポイントを使ったほうが良ければそうする。要は効率を良くするってことだ。現場でフリーズさせてその場で伝える時だってあるし、いろんなアプローチがある。今日はこれしかやらない、でも、それが近道ならそれでいい」
 
――数か月後のインタビューでは、「1年かかると思っていたものが、約半年でできている手応えがある」とも語っていました。
「ある意味、選手たちは真面目だし、彼らも手応えを感じていたと思う。これをやっていればやられないな、とか。それで結果がついてきて、勝利給でも手にすれば確信になってくる。それが今年の初め頃には、言われなくても分かっているよ、という感じになってきていたな」
 
「サッカーに対するピュアな部分は、これまで指導してきたチームの中でも一番だと思う」2012年8月21・28日号掲載
――"選手たちは真面目"という今の発言につながることを、2年前にも言っています。
「ピュア。言い方はそうかもしれないけど、何も教わっていない、自分の好きなことだけをやってきてここまで来たな、という意味合いもある。つまりはだ、俺もそうだけど、食事をした後に皿を洗うのは嫌いなんだよ。でもちゃんと皿を洗えば、人間的にも成長できる。皿を洗うのも料理のひとつだ。作ることや食べることだけに専念していてはダメ。嫌な仕事も全部やってはじめて、選手として完成されていく。その必要性は説いたし、最終的には、それができた選手が生き残ったという言い方になるかもしれない」

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