「アジア予選で不可欠なのは誰かが分かった」熟練の英国人記者は“完勝のパラグアイ戦”をどう見た?

2019年09月06日 マイケル・プラストウ

心強いセットがそこかしこに。確実に進歩している

チーム全体のバランスが崩れるなか、孤軍奮闘で攻撃陣を牽引した久保。プラストウ記者はあらためてその能力を高く評価した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 パラグアイ戦は、新たな"発見"というよりも"再確認"の色合いが濃いゲームだった。

 ゴールはふたつとも素晴らしい展開から生まれた。長友佑都と酒井宏樹がサイドからお膳立てし、大迫勇也と南野拓実が一流のフィニッシュを見せた。とはいえ、長友、酒井、大迫らベテラン組の個の技術や戦術理解度の高さは、もはや分かり切っている。より重要なのは、彼らがどれだけ新しく加わったヤングタレントを盛り立て、連携し、サポートしているか。そこだけを切り取ると、実に見事な"再確認"ができた。

 エリアごとのコンビネーションで見れば明らかだ。酒井と堂安律、長友と中島翔哉、吉田麻也と冨安健洋、さらには吉田と植田直通と、いずれも心強いセットだっただろう。やはりこれまでの森保ジャパンのベースを担ってきた前半出場のメンバーは、攻守両面での連動がスムーズでバランスが良かった。パス回しも観ていて安心できたし、アジアカップのときよりも確実に進歩した印象を受ける。

 取り立ててニュースにはならないが、代表チームにおいてはこうした"再確認"がきわめて重要な位置を占める。実際、日本の欧州組には時差ボケや移動の疲れが残っていただろうが、一人ひとりからはあまりそれが感じられなかった。シンプルな約束事のもとで、ストレスを抱えずにプレーできているからで、寄せ集めでタイトな日程で強化を図る代表チームでは大切な要素となる。

 
 そんななか、個人的に目を引いた選手がふたりいる。橋本拳人と冨安の両人だ。

 26歳ながらこのチームではベテランの部類に入ってしまう橋本は、なによりポジショニングが冴えていた。90分間を通して安定感があり、パラグアイが隙あらば狙っていたカウンターの芽をことごとく摘み取る。攻撃面でも局面を前に進めるパスを迷わず撃ち込んでいたし、ボールタッチ数が多く、ミスが少ない。

 この日は柴崎岳、板倉滉と中盤で並んでも、ひとつ位置を下げてバックラインに入っても、橋本のプレー精度と安定感、読みの鋭さはチームの大きな武器となっていた。堅守速攻を徹底してくるアジア勢と対峙するワールドカップ予選では、彼のようなタレントが不可欠だということが分かっただろう。

 もうひとりは、この夏にイタリア・セリエAのボローニャに活躍の場を移した若き守備者、冨安だ。パラグアイ戦では本職のセンターバックのみならず、サイドバックでも異彩を放った。見慣れていないのもあって、攻撃面での関与はいかほどかと見守っていたが、オーバーラップのタイミングも頻度もクロスの質も申し分なかった。1対1の守備対応は言わずもがなだ。原口元気に通したロングフィードは圧巻だった。

 まだまだ伸びしろがふんだんにありそうな、末恐ろしい若者である。

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