難局の湘南に宿る“諦めない”魂――残り15分からゴールを奪い切れる、その粘りの源泉は?

2019年09月03日 佐藤亮太

ここ5試合で10得点中、後半に挙げた得点は9。75分以降には5得点

終盤、同点PKを決めた梅崎がサポーターに向かってアピール。古巣の浦和からゴールを奪ってみせた。写真:滝川敏之

 湘南ベルマーレのゴール裏に漂う期待感。絶対に追いつけるという信頼感。それらが実現してしまうのだから不思議だ。
 
 この日もそうだった。9月1日のJ1リーグ25節、湘南はホームで浦和レッズと対戦。開始3分で失点。その後、湘南が押し気味に進めるも、なかなか点を奪えなかった。1-0のまま、迎えた試合終了間際にPKの判定。これを倒されたMF梅崎司がきっちり決め、1-1のドロー決着。勝点1をもぎ取った。


 湘南の粘りは、ここ5試合を見ると顕著だ。
 
21節・鹿島戦:2点を先行し、同点にされたが、終了間際に突き放し、3-2で勝利。
22節・磐田戦:先行されるも、後半3得点で逆転勝利。
23節・鳥栖戦:鹿島戦の逆の展開となり、2-3で敗戦。
24節・仙台戦:先制されるも76分に追いつき1-1の引き分け。
25節・浦和戦:先制されるも90分に追いつき1-1の引き分け。
 
 得点を見ると10得点中、後半に挙げた得点は9点。うち75分以降の得点は5点だ。この勝負強さ、粘りの源泉はなにか?
 
「間違いなく曺さんのスピリッツが浸透している」と断言する梅崎。「そのスピリッツを仲間同士、意識して感じ合いながら、積み重ねてきた。だからこそ"諦めない"という、一見、簡単で難しいことができている」とまっすぐに語った。
 
 梅崎同様、「曺さんが身につけてくれたもの」とDF岡本拓也。「みんなやるべきことをやっている。いま湘南の(監督不在の)難しい状況でブレずにまとまって戦えている」と語った。
 
 曺貴裁監督の手腕だけではない。「(劣勢のなか)ピッチで何かを変えようとする選手がいる。それが今までなかった部分」とMF齊藤未月。「切磋琢磨しあっているからこそ、出ている選手は危機感をもってピッチに立っている」と選手個々、選手同士の意識の高さが窺える。
 
 また粘りの手応えは、誤審で揺れた12節のアウェー浦和戦にあったとDF杉岡大暉。
「1点取られても、1点返せば、いけるという空気が今のチームにある。アウェー・浦和戦で2点差から逆転できた経験を踏まえ、自分たちには流れを変えられる力があると感じた」と語った。
 
 ただ、その浦和戦後、湘南はリーグ5連敗を喫したが、戦い続ける姿勢を崩さなかったからこそ、ここ最近の粘りが出てきたとも言える。
 
 戦う姿勢を変えない。これを裏付けるのが高橋健二コーチの言葉。「急に今年になって粘り強くなったわけではない。これまでの積み重ねが出ている」と語った。
 

次ページ「日々の練習、そしてここ馬入グラウンドで起きた出来事がすべて」(岡本)

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事