【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「だからミラノ・ダービーの先発落ちは“ビッグニュース”だった」

2014年11月26日 マルコ・パソット

本田がピッチに入ってミランが活気づいたのは確かだ。

ミラノ・ダービーのベンチスタートは、長旅を伴った代表戦での疲労を考慮しての判断だったとパソット記者。 (C) Getty Images

 イタリアの老舗スポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のミラン番マルコ・パソット記者が、本田圭佑とミランを綴る連載コラムがスタート! 毎週水曜日、とっておきの情報を現地直送でお届けする予定です。
 
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 ミラノ・デルビー(ダービー)。試合の模様は五大陸すべてに中継され、サン・シーロの記者席には300人ものジャーナリストが詰めかけた。
 
 インザーギにとっては監督として臨む初デルビーであり、インテルのベンチの電撃交代劇(マッザーリからマンチーニへ監督交代)もあって、今回のデルビーは久々に盛り上がりを見せていた。
 
 しかしその前夜、とあるニュースが世界を駆け巡った。本田が先発で出場しない――。この報道にがっかりしたファンは多かったかもしれないが、別な見方をすれば、それは本田がここまで良いプレーをしてきたなによりの証拠でもある。
 
 これが昨シーズンの本田だったら、とくに大きな扱いにはならなかっただろう。事実、前回のデルビーでは本田は90分間ずっとベンチにいたが、イタリアでそれが取り上げられることはなかった。
 
 多くの者が、本田がプレーすると信じて疑わなかったからこその、ビッグニュースだった。インザーギがミランを指揮するようになってから、本田がスタメンを外れた試合はひとつもなかった。11試合で11回の先発出場。ただ心配は無用だ。今回のスタメン落ちは、彼に対する警鐘ではない。疲労を考慮しての、単なる戦術上の選択だ。
 
 本田は開幕からここまで連続出場し、活躍し、おまけに遠い日本との間を往復して代表戦でもプレーしていたのだから、蓄積疲労が懸念されるのも無理はないだろう。9月と10月の代表ウィーク明けにはスタメンで起用したインザーギも、さすがに今回は休ませることにした。すでにここ数試合で、本田に多少の疲れが見えていたからだろう。
 
 監督がセードルフからインザーギに代わっても、彼らが本田に求めるものは同じだ。右サイドでのエネルギッシュな動き。攻撃はもちろん、中盤を、時にはサイドバックも助けるよう要求される。本田が力を出し惜しみするような選手でないことは、誰もが知っている。だからこそインザーギは彼を高く評価し、常にレギュラーとして使ってきたのだ。
 
 デルビーでは、残り20分になってインザーギは本田をピッチに送り出した。流れを変えるにはあまりにも遅すぎたが、彼が入ってミランが活気づいたのは確かだ。
 
 昨シーズンと違って、自分がピッチに入ったら何をすべきかを本田ははっきりと理解している。顔を上げた時、彼はどこにチームメイトがいるかを把握しており、監督がその場面で何を求めているかも分かっている。右サイドを縦横無尽に動けること、いや、動かなければならないことも知っている。つまりミランというチームのメカニズムを本田は完全に理解しているのだ。

次ページイタリア語で答えようとする姿に記者から拍手が。

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