久保建英、マジョルカ入団の舞台裏。一度はマドリー残留に傾きながら、レンタル移籍を決断させた2つの理由【現地レポート】

2019年08月25日 セルヒオ・サントス

ラウール監督は強硬に反対

マドリー残留ではなくマジョルカへのレンタルを選択した久保。その理由とは?(写真はクラブの公式ツイッターより)。

 今シーズンいっぱいはカスティージャ(Bチーム)でプレーさせて、スペインのサッカーに適応させる。

 というのが、FC東京から獲得した久保建英について、レアル・マドリーが思い描いていた当初のプランだった。

 しかし予想外の事態が起きた。久保のレベルが想像を上回っていたことだ。プレシーズンキャンプに続き、テストマッチでも才能の片鱗を見せ、次第にクラブ内でレンタル移籍を推す声が増していった。

 といっても、完全にコンセンサスが得られたわけではない。例えば、カスティージャを率いるラウール・ゴンサレス監督は、最終的な人事権はフロントにあるとしながらも強硬に反対した。

 しかし、残留かレンタル移籍かという最終判断は、久保サイドが決断すべきという結論に至り、以降はそれぞれの選択肢のメリットとデメリットについて詳細に説明しながら、話し合いを重ねた。ただこの時点で久保自身の気持ちは残留で固まっており、実際、一度バジャドリーに断りの連絡を入れている。
 
 しかしその後、この日本代表FWの気持ちに変化を生じさせる事態が2つ起きた。ひとつは、カスティージャの強化試合に出場したことで、2部Bのプレースタイルを肌で体験したこと。もちろん当初から彼も伝え聞いていたことだが、実際に激しい当たりやラフなタックルを受けて、そのインテンシティーの高さを思い知らされたのだ。また注目度の高い久保は、2部Bの選手にとっては格好の標的となり、その激しさに余計に拍車がかかる恐れがあった。

 もうひとつはEU外選手枠の問題だ。久保のマジョルカへの移籍が確定する時点で、フェデリコ・バルベルデとエデル・ミリタンが2枠を埋め、残りの1枠をヴィニシウス・ジュニオールとロドリゴの3人で争うという構図となっていた。ただでさえ最後のイスを巡る争いは熾烈ななか、現在移籍交渉をしていると取り沙汰されているネイマールが入団すれば、トップチームへの扉はほぼ完全に閉じられることになる。

 こうして久保の気持ちは、次第にレンタル移籍へと傾いていった。
 

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