「腸が煮えくり返る」F・トーレス引退試合で屈辱の6失点大敗…。鳥栖の名手が漏らした憤り

2019年08月24日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

「勝ってフェルナンドを送り出したい」と意気込んだが…

F・トーレスのラストマッチで大敗を喫した鳥栖。中盤で先発した高橋秀人が試合内容を悔いた。 写真:徳原隆元

「勝ってフェルナンドを送り出したい」

 8月23日に行なわれた神戸戦で、18年に及んだ現役生活に終止符を打つスペイン代表FWフェルナンド・トーレスの花道を飾るべく、鳥栖の面々はそう意気込んでいた。

 だがしかし、90分を戦い終え、突き付けられた現実は、あまりに酷だった。1-6。このスコアがこの日の両軍の差を明確に表わしている。

 キックオフ直後から神戸の司令塔アンドレス・イニエスタを起点とした素早いパスワークに翻弄された鳥栖は、前半だけで3失点。本拠地を水色に染め上げた鳥栖サポーターの大声援もむなしく後半も3点を奪われ、79分にCKから金井貢史が1点を挙げたが、もはや焼き石に水だった。

 主役になるはずだったF・トーレスを効果的に活かす術を最後まで見出せなかった鳥栖は、逆にイニエスタ、トーマス・フェルマーレン、酒井高徳、山口蛍、ダビド・ビジャといった神戸が誇る多士済々のスター軍団に、まるでサンドバックのように叩きのめされた。そこには、明らかな個人の能力の差があった。

 屈辱の大敗を喫した試合後、苦虫を嚙み潰したような表情で、「フェルナンドを良い形で送り出せなかった。自分自身に腸が煮えくり返る」と憤りを露わにしたのが高橋秀人だ。

 この日、19分にPKを献上し、その後のゴールラッシュに繋がる失点に関与してしまった31歳は、「チーム全体が一体となってきていると感じていた」と前置きしたうえで、込み上げる感情を隠すことなく漏らした。

「一番重要なフェルナンドの引退試合に結果が伴わなくて、スコア的にも見苦しいというか、あまり見せられないような結果だった。不甲斐ない気持ちで今はいっぱいです。しかし、ああいう雰囲気のなかでも、クラブとサガン鳥栖のサポーター、ヴィッセル神戸のサポーターの皆さんが、良い形で彼を送り出そうとしてくれたことには感謝したい」

 悔しさを噛みしめた高橋だが、昨年7月にF・トーレスが電撃的に入団してから約1年2か月あまりで4歳年上のスーパースターから得たものは少なくない。鳥栖が誇る名ボランチはしみじみと語ってくれた。

「プロとしてあるべき姿を見せ続けてくれたというか。本当に勇敢な選手で、勝利やゴールのために常に120パーセントの力で行動していた。彼があれだけ頑張っているからこそ、自分も足が動いたシーンがいっぱいありましたし、彼のアドバイスによって自分も成長できた。あれだけトップ・オブ・トップの選手が、目に見えない努力しているのだから自分たちもやらないといけないと思えた」

 苦しい時にチームを牽引してくれたF・トーレスはもういなくなる。そのなかで、現在、自動降格圏の17位とは勝点1差の16位に位置している鳥栖は、この苦境をいかに脱するのか。世界的スターを失ったいまこそ、真価を問われることになりそうだ。

取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)

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