【プレミアリーグ優勝予想&展望】王者マンCは唯一の課題を克服。リバプールには懸念材料が…

2019年08月07日 内藤秀明

リバプールの不安は過密日程による疲労の蓄積。

ロドリ(左)を獲得してフェルナンジーニョの代役不在という唯一の不安を解消した王者シティが、優勝候補の筆頭だろう。(C)Getty Images

 近年のプレミアリーグの急成長は凄まじい。クラブは資金力を生かしてクオリティーの高い選手を次々と獲得し、ユルゲン・クロップ、ペップ・グアルディオラなど優秀な外国人監督が最新の戦術を英国に持ち込み、高いレベルで実践している。多くのチームが成長し続けていることもあり、ここ数年は「今シーズンは過去最高のデッドヒートになる」と開幕前には感じる。そして、それは8月9日に幕を開ける2019-2020シーズンも同様だ。

 ただ優勝については、マンチェスター・シティを一番手に推す声が多い。イギリスのブックメーカー『ウィリアム・ヒル』も、「プレミアリーグの優勝オッズ」はシティを一番人気に設定している。直近のシーズンで2連覇している実績に加えて、唯一の穴と言われていたフェルナンジーニョの代役不在という問題をロドリの獲得で解決できた点も大きいだろう。

 これで中盤の底は、昨シーズン途中からフィットしはじめたイルカイ・ギュンドアンを含めれば3人体制となる。アンカーはむしろ供給過多の状況で、すでに何度か試しているフェルナンジーニョのCB起用が本格化するかもしれない。機能すればヴィンサン・コンパニが退団した"戦力面"の穴は埋まるはずだ。

 それ以上の問題は、リーダーシップをだれが取るかという点。精神的な支柱だった偉大なキャプテンがチームを去ったことで、組織としてのまとまりに影響を及ぼすのは間違いない。その意味でもまだ決まっていない新キャプテンの人選は非常に重要になる。

 いずれにしても総合的に見ればシティ有利は変わらない。この絶対的な王者にどこが土をつけるのか、そこにも注目したいところだ。

 もうひとつの見どころは、混戦が予想される2~6位の戦い。実力的にはリバプールが若干抜けている印象もあるが、彼らには小さくない不安材料がある。

 懸念されるのは疲労の蓄積だ。チャンピオンズ・リーグ(CL)決勝に進出した影響で、昨シーズンは6月初旬までシーズンを戦っている。さらにフィルジル・ファン・ダイクやジョーダン・ヘンダーソンなど、UEFAネーションズリーグの決勝トーナメントに進出した代表選手たちは、6月中旬まで休めていない。加えてコパ・アメリカやアフリカ・ネーションズカップの影響で代えのきかない前線の3枚や、守護神アリソンらも代表戦に駆り出されている。昨年がワールドカップイヤーだったことも考えると、コンディション面は非常に心配だ。

 にもかかわらず、リバプールのプレシーズンマッチは試合数が多かった。コミュニティシールドもカウントすれば、リバプールは開幕前にすでに8試合もこなしている。

 同じくCL決勝に進出したトッテナムがリバプールよりも3試合少ない5試合しかプレシーズンマッチを戦っていない事実と比較すると、明らかに負荷がかかっている。長期的なフィットネス維持を見据えたトレーニングは、はたして十分に行なえたのだろうか。

 加えて8月は、開幕後もUEFAスーパーカップの影響でイスタンブールまで遠征しなければならないため他のチームより試合が多く、クラブワールドカップに参戦する12月に至っては29日間で10試合を消化する可能性もあるという。これだけ年内の日程が過密であることを考えると、年明け以降、体力が維持できるのか不安が拭えない。

 もちろん、こうした不安が杞憂に終わる可能性もある。コミュニティシールドを見る限り、モハメド・サラーを含めて多くの選手に疲労の色はなく、当面は問題なく稼働できそうだ。またジョー・ゴメス、アレックス・チェンバレン、アダム・ララーナなど、昨シーズンは長期離脱していた選手たちの稼働が見込める。今夏、8月6日現在で即戦力の補強はないリバプールながら、故障離脱組の復帰がいわば「補強」と言えるだろう。主力の放出もないため、実質的な戦力は純増だ。復帰組を含めチームを上手くローテーションすることで過密日程を乗り切れれば、念願のリーグタイトルも見えてくるか。

次ページ新生マンUは的確な補強を実現。

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