東福岡で二冠に貢献した名ウインガーがドイツで司令塔の才を開花! 今夏J新加入の21歳が低迷する栃木を選んだワケ

2019年07月31日 桜井 誠

ドイツに渡り、チーム事情からボランチで多くの経験を積むことに

今夏の移籍ウインドーで栃木に加入した三宅。ドイツで経験を積み、ゲームメーカーとしての才能を開花させて帰国した。(C) J.LEAGUE PHOTOS

「やれると分かっている環境でプレーすることって楽しいですか?」
 J2下位で苦しむ栃木に加入し1か月。ボランチやシャドーで定位置を獲得したMF三宅海斗のサッカー人生は、その言葉に集約されている。

 
 高校時代、東福岡高で二冠を達成。鹿屋体育大では1年から主力としてプレーしたが中退。そのままドイツに渡り、4部のフォルトゥナ・デュッセルドルフU23で2シーズンを過ごした。何もないところからチャレンジを続け、最後はゲームキャプテンを任される存在にまでなったが、2シーズンで帰国。自らの意思で低迷する栃木の戦列に加わった。「チームを勝たせることにやりがいを感じる」と話す21歳は、常に自らを厳しい環境に置くことで自身の存在価値を高めている。
 
 高校サッカーに明るい人ならば、三宅はウイングのイメージが強いだろう。しかしドイツに渡り、チーム事情からボランチで多くの経験を積んだ。以前からスピードのある左利きのアタッカーとして名前は通っていた。しかし、柔らかなタッチから繰り出されるパスや、勝負どころをしっかり押さえたアプローチは、彼のゲームメーカーとしての才能を開花させることになった。練習は常にアグレッシブで年上の選手にも臆せず要求をする。J1でプレーしてもおかしくないテクニックとメンタルを持ち合わせた若手といっても過言ではない。
 
「事前にドイツ語のリスニングもしていたが慣れるまで1年かかった」と話すデュッセルドルフでの生活は、「サッカーだけではなく、言葉、天候、食事、人など全てが違っていた」。戦術に個を当てはめることの多い日本のサッカーに対し、ドイツは秀でた個を集め、その上で戦術を構築していく。そんな異国のサッカーを体感し、「今まで取り組んできたサッカーが当たり前の光景ではない」との思いを再確認したという。
 
 多くのことを学んだドイツの生活だった。しかし再びの渡独は今のところ考えてはいない。帰国し「東京五輪にも出られれば」と新たな目標も設定した。五輪に向けた日本代表のメンバーも固まりつつあるなか、滑り込みでの代表入りを狙う。厳しい状況ほどモチベーションを高める男に気負いはない。

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