【現地発】日本の久保建英&安部裕葵フィーバーとの温度差。スペインのメディアやファンは「トップ昇格」の現実を分かっている

2019年07月23日 山本美智子

安部はまったくのノーマークだった

ともにスペインのメガクラブの門を叩いた久保(左)と安部(右)。トップ昇格なるか。写真:Getty Images、金子拓弥

 バルセロナのカンテラ(下部組織)で育った久保建英が、レアル・マドリーへの移籍を決めたというニュースが流れたのが6月14日。それから、ちょうど1か月後の7月14日、安部裕葵がバルセロナのエル・プラット空港に降り立った。バルサと鹿島アントラーズの間で、安部の移籍が合意に達したためだった。

 マドリーの久保も、バルサの安部も、まずはBチームで研鑽を積むことになるだろう。だが、トップチームのプレシーズンツアーに帯同していることもあり、ふたりの名前は、たしかにスペインのメディアでも連日のように取り上げられてはいる。

 だが、日本での報道のされ方とは、いささか温度差があるように思う。ふたりが登場するのは、新聞で言えば稀に1面に載っても扱いは極めて小さく、ほとんどが2面以降で、それも数行だったりする。その記事が日本で取り上げられると、まるでふたりが一面やテレビで大きく扱われたかのように誇張されていることが少なくないのだ。

 ただ、スペインに住む人間としてこれだけは言っておきたいのは、久保が注目されているのは、「日本人だから」という理由ではない、ということだ。
 
 周知の通り、自前のカンテラで育った才能豊かな逸材を、バルサはつなぎ止めることができなかった。そのうえ久保が、宿敵マドリーに入団するという、ドラマチックかつ、ドライなプロ的な選択をしたことに関心が集まったのだ。

 安部はそれとは正反対で、メディアもまったくのノーマークだったゆえに、久保を逃したバルサが急遽、「穴埋め」を探したという印象を与えているのは否めない。その意味では、安部の場合は、「日本人」ということを意識して獲得したと周囲は見ている。

だが、クラブはそういった見方に反論する。元ドリームチームの一員で、カンテラのスタッフとして働いているホセ・マリア・バケーロは、「何年も前から、安部を追っていたし、これは私のゴリ推して獲ったようなものだ。1対1に強くスピードもあり、バルサで活躍できるポテンシャルを持った選手だと思う。だから、ここにいるんだ」とコメント。彼の声はバルサの"公式見解"と言ってもいい。

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