プロも注目! 東福岡 夏冬連覇の鍵を握る2人のアタッカー|中島賢星×増山朝陽

2014年11月12日 安藤隆人

中島賢星――「悔し涙」に暮れた全国制覇で選手権への思いは強く。

すでに数チームからオファーが届いている。選手権では得点王の夢をどうしても叶えたい。(C) SOCCER DIGEST

 選手権福岡予選を圧倒的な力で勝ち上がり、11月16日の決勝に駒を進めた「赤い彗星」――東福岡。夏のインターハイを制し、この冬に2冠を目指すチームの柱となっているのが、中島賢星と増山朝陽だ。早くからプロの注目を集めた主将の中島と、インターハイで大ブレイクを見せた増山。高校生活最後となる選手権への、それぞれの決意とは――。
 
【2014南関東総体】決勝|東福岡 4-大津
 
 山梨インターハイ。優勝を手にしたその瞬間、中島の目からは涙がこぼれていた。
 
 悲願の全国制覇を成し遂げ、嬉し涙かと思いきや、その涙は全く逆の意味だった。決勝戦後、10番を背負う主将はこう言った。
「何もできなかった。決勝の舞台で自分の力を出し切れなかった。それが悔しいんです。嬉し涙と思われたくない」
 
 ずいぶんと逞しくなった。今から3年前、中学3年生ながら、福岡U-18のレギュラーとして、高円宮杯プレミアリーグで堂々たるプレーを見せていた華奢な少年が、ユニホームを赤に変え、182センチの長身に分厚い胸板とがっしりとした下半身を携え、左腕にはキャプテンマークを巻いてピッチに立っている。
 
「自分にしかできない仕事があると思っています。試合中の指示やチームに対する指摘など、他の人が言うよりは自分が言うことで、引き締まるところもあると思う。でも、そう言えるような人間になるためにも、まず自分がやらないといけない」
 
 今年に入り、中島は左足のシュートに磨きを掛けた。居残り練習ではひたすら左足を振り抜き、「左右両足、どこからでも点が取れる選手になりたい」と、スケールアップに努めた。結果、シュートエリアは広がり、より敵に脅威を与える存在となった。
 
 インターハイ3回戦の山梨学院戦。東福岡がこの大会で最も苦しんだ試合で、チームを勝利に導いたのが、中島の一撃だった。0-0で迎えた後半3分、左からのクロスを中央でDFに囲まれながらも正確に胸トラップし、そのままボールの落ち際を右足一閃。GKの反応が追いつかないほど、強烈な威力のシュートは、相手GKの頭上を射抜き、ゴールに突き刺さった。
 
 しかし、この試合でイエローカードをもらい、累積で準々決勝の鹿児島実戦は出場停止。さらに復帰戦となった準決勝・青森山田戦、決勝・大津戦ではいずれもノーゴールに終わった。決勝が終わった時、喜ぶチームメイトの姿が悔し涙でにじんだ。
 最後の選手権への思いは熱い。
「選手権は憧れの舞台。昨年の選手権は出場時間が短かったので、今年も出場して、個人としては優勝だけでなく、得点王を狙っていきたい。思い残すことなく全力でやって、最高の結果で終われたらいいなと思います」
 
 もう一度あの頂に立ち、今度は嬉し涙を流せるように。逞しくなった『赤い彗星のエース』が、力強い一歩を踏み出す。

■プロフィール
 中島賢星(なかしま・けんせい)/1996年9月23日生まれ、福岡県出身。182㌢・71㌔。福岡U-15-東福岡高。横浜など早くから複数のJクラブが注目するユース世代屈指の万能型アタッカー。ゲームメイクからフィニッシュまでハイレベルな攻撃性能を持つ。

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