ユベントスの強化部門は欧州屈指! ブランド力向上でC・ロナウドにデリフトと大物獲得も【スカウト&フロント採点】

2019年07月10日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

移籍金ゼロのディールにも優れる

ユーベの強化部門は現在、パラティチ(左)が仕切っている。今夏は移籍金ゼロでラビオ(中央)を獲得。(C)Getty Images

 前GD兼CEOのジュゼッペ・マロッタ(現インテルCEO)が現強化責任者のファビオ・パラティチと共に、ハビエル・リベルタ(現ゼニトSD)をチーフスカウトに据えて築き上げたユベントスのスカウティング網は、ヨーロッパでも一二を争うレベルにある。

 実際、近年の実績を見ても、大金を投じた主力クラスの補強で失敗らしい失敗はほとんどない。かつてのアンドレア・ピルロにはじまりポール・ポグバ、サミ・ケディラ、ダニエウ・アウベス、エムレ・ジャン、そして今夏のアドリアン・ラビオにアーロン・ラムジーと、契約満了選手を移籍金ゼロで引き抜いてくる手腕にも優れる。

 パラティチは元々スカウト畑からの叩き上げで、タレントの発掘眼には定評がある。昨年11月に上司だったマロッタが去った後は、パラティチがフットボール部門の総責任者(チーフ・フットボール・オフィサー)となり、チーム部門統括責任者のフェデリコ・ケルビーニが片腕として支える組織体制になった。そのケルビーニの下には、U-23とレンタル選手を担当するフィリッポ・フスコ(前ヴェローナSD)、アカデミー担当のマッシミリアーノ・スカーリア、女子担当のステーファノ・ブラギンという3人のSDが置かれている。

 狙ったターゲットを手に入れる交渉力に関しても、イタリア国内ではもはや敵なし。昨夏のクリスチアーノ・ロナウド獲得、そして今夏のマタイス・デリフト獲得内定が示すように、国際レベルでも近年の成功でブランド力を大きく高めてきている。ターゲットを絞り込み、確実にモノにする手腕は極めて高い。

 チームマネジメントに関しては、2年前のレオナルド・ボヌッチ、18-19シーズンのメディ・ベナティアのケースが示すように、内部に小さな軋轢が生じるケースが時にある。マロッタは常に監督を支持するというクラブの立場を明確に打ち出して事態を収拾してきたが、パラティチにその仕事はまだ荷が重い印象だ。

 監督がマッシミリアーノ・アッレーグリからマウリツィオ・サッリに代わった新シーズンは、チームマネジメントがどう変わっていくか注視する必要がある。

[ユベントスの強化部門&フロント採点]
●スカウティング:9点
●交渉力:9点
●チームマネジメント:7.5点
(すべて10点満点)

文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※ワールドサッカーダイジェスト2019年5月16日号より転載。

【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にジョゼップ・グアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事