またもタイトルを逃したアルゼンチン代表…。「前代未聞のプロジェクト」に未来はあるのか?【現地発】

2019年07月08日 チヅル・デ・ガルシア

ブラジル戦の“疑惑”に対するAFAの厳格な対応

チリに勝利して3位となったアルゼンチンだが、またもタイトルを逃したチームに国民は……。 (C) Getty Images

 ブラジルで開催された今回のコパ・アメリカで、アルゼンチン代表は26年ぶりのタイトルを逃した。2015年の前回大会と翌年のセンテナリオで2年続けて決勝で対戦した因縁の相手チリと3位決定戦に2-1で勝利し、3位で大会を終えた。

 改めて考えると、26年という時間は長い。友人の代表番記者は、「その間にワールドカップ7回、コパ・アメリカ9回、コンフェデレーションズカップ2回があったと思うと悔しい」と肩を落とした。

 それでも今大会を終えての国内の反応は、比較的穏やかなものだった。準決勝でブラジルに敗れたあとに泣き崩れたレアンドロ・パレデスの姿にアルゼンチンの人々は心を打たれ、3位決定戦の後もディエゴ・マラドーナを思わせるような歯に衣着せぬコメントで、判定と南米サッカー連盟に対する不満を漏らしたリオネル・メッシに賛同、共感した。

 グループステージ第2節でパラグアイと引き分け、早期敗退の危機に晒された時には、リオネル・スカローニ監督に対する猛烈な批判が巻き起こった。だがその後、カタール相手にプライドを見せ付ける形で準々決勝進出を決め、天敵ベネズエラにも勝利を収めると、徐々に機能し始めたチームへの支持率も高まっていった。ブラジル戦については、「今大会で最高のプレー内容」と評する意見が多数を占めた。

 実際のところ、チームとして完成度の高かったコロンビアとウルグアイが揃って準々決勝で姿を消すなか、監督の経験不足とチームの準備不足というハンデを負いながらも若手主体のチームでベスト4入りを果たしたのは上出来、というのが妥当な評価だろう。

 PKの可能性がありながらVARが機能しなかったブラジル戦で起きた疑惑の判定に関しては、アルゼンチン・サッカー協会(AFA)が、南米サッカー連盟(CONMEBOL)に6ページにも及ぶ抗議書を送りつけるという異例の展開となっている。

 AFAはCONMEBOLの審判委員会責任者の解任を迫っただけでなく、AFA審判委員長のフェデリコ・ベリゴイも状況の説明を請う文書を提出し、笛を吹いたロディ・サンブラーノ主審とVARとのやり取りが録音された「ブラックボックス」へのアクセスを要求する事態に発展しているのだ。

 アルゼンチンとブラジル両国のメディアの報道によると、この試合を観戦していたブラジルのジャイール・ボルソナロ大統領のボディガードが会場で使用していた無線が主審とVARの通信を妨害していたという説もあり、AFA側はCONMEBOLが調査の要求に応じるまで一歩も引かない強い姿勢を崩していない。
 

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