【現地発】「神」の名を持つ22歳がブラジルの救世主となるか――

2019年07月06日 石川聡

ロシアW杯では無得点に終わる

アルゼンチン戦で1ゴール・1アシストを記録したG・ジェズス。決勝で勝利を呼び込めるか。(C)Getty Images

「Jesus」(英語でジーザス。イエス・キリストのイエス)の名を授けられた22歳の若武者は、ブラジルの救世主となれるのか――。

 7月2日にベロオリゾンテのミネイランスタジアムで行われたコパ・アメリカの準決勝で、ブラジルはアルゼンチンとの「南米クラシコ」に2-0で勝利。1993年のコパ・アメリカ以来となる宿敵の国際タイトル獲得、リオネル・メッシの代表初タイトルの夢を打ち砕いた。

 この試合で全得点に絡んだのが、ガブリエウ・ジェズスだ。19分にロベルト・フィルミーノのラストパスを蹴り込んで先制点を挙げると、71分には圧倒的な突破力で追いすがるマンチェスター・シティの同僚ニコラス・オタメンディを振り切り、フィルミーノの得点をアシスト。同点ゴールを狙って圧力を強めていたアルゼンチンの士気を挫くに十分な追加点となった。

 G・ジェズスにとって、ブラジル代表の公式戦で挙げたゴールは、2017年10月の18年ワールドカップ南米予選、チリ戦以来のこと。ロシアでの本大会は全5試合に先発出場しながら無得点に終わった。

 そのせいもあってか、新たなサイクルのスタートとなった昨年9月の国際親善試合では、招集外になるという失意を味わってもいる。
 
 今回のコパ・アメリカでもグループステージ最終節のペルー戦で、後半アディショナルタイムにPKのチャンスをもらいながら、GKにセーブされてしまった。5-0の大勝に沸いたチームの中でただ一人ショックを隠せず、ベテランDFのチアゴ・シウバは「ドレッシングルームでは、彼の横にいてずっと慰めていなければならなかった」という。

 しかし、そこで挫けない気持ちの強さが、ジェズスの強みの一つだ。アルゼンチン戦では、立ち上がりから右サイドで果敢にドリブル突破を仕掛けるなど、強い敢闘精神を見せた。

 そのテクニックやスピードもさることながら、チッチ監督は「粘り強さと何かを追求しようとする姿勢こそが彼の長所だ」と真摯な姿勢を称賛。「(練習で)シュートを50本打てと言ったら、51本を打つような選手だ」と、そのひたむきさを称えている。
 

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