【磐田】辞任を決めてから一度だけ、名波浩は泣いた。「今日の朝、ちょっと…」

2019年07月01日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「初めて使う言葉かもしれないですけど、『悔しかった』」

川崎戦当日の朝、辞任を決めてから、名波は一度だけ涙を流した。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 6月最後の日、前半戦最後となる17節の川崎戦を終えると、磐田の名波浩監督は成績不振と、「選手たちに気持ち良くサッカーをさせてあげられていない」ことに責任を取る形で、辞任を表明した。
 
 川崎戦は1-3の敗戦。ただ、試合後の会見で「今日のゲームで勝とうが負けようが、ここで辞任することを決めていました」と明かした。
 
 いつ、その決断を下したのか。それに関しては「差し控えさせていただきます」と口を閉ざす。自らの進退にケジメをつけると決めてから、「選手やスタッフ、社長や強化部と話そうが」一切泣かなかったという。

 たった一度だけ、あの朝を除いては――。
 
「(辞任を)決めてからここまでもう一切……あ、一切泣いてはなくないな。今日(川崎戦当日)の朝、ちょっとあの、大分と戦った、あの昇格(を決めた)、J2のラストゲームを見て、あれでちょっと泣きました」
 
 2015年のJ2リーグ最終節、大分に2-1で競り勝ってJ1昇格を決めた。62分に伊野波雅彦のゴールで先制。90分に同点に追いつかれるも、アディショナルタイムに小林祐希が決勝点を叩き込む。劇的な勝利――名波にとって思い出深い一戦だが、同時に「監督を辞職するひとつの要因」でもあった。
 
「大分戦のあの感動は、ここにいるみなさんもご存じの方は多いと思うんですけど、やっぱりあれ以上の感動を生み出せなかった、あれ以上の感動するようなゲームを、もっともっとたくさん、サポーター、ファンのみなさんに見せられていれば、こういう結末にはならなかったと思うので」
 
 胸を占めたのは「無念」の二文字だったか。「初めて使う言葉かもしれないですけど、『悔しかった』かなと思っています」と名波は静かに語った。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 
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