長谷部誠が原点・藤枝で子どもたちに伝えた実戦的技術と考えることの大切さ、そして現実の厳しさ

2019年06月27日 前島芳雄

動画メッセージと生の言葉で質問を投げ掛け、子どもとたちとコミュニケーションも

藤枝で自身が運営するサッカースクールで子どもたちを指導した長谷部。動画などを用いてコミュニケーションを図っているようだ。写真:前島芳雄

 日本代表の元キャプテン・長谷部誠(フランクフルト)が、2年前に地元・静岡で立ち上げた独自のサッカースクール「MAKOTO HASEBE SPORTS CLUB」。ブンデスリーガがオフシーズンのこの時期、長谷部校長からピッチ上で直接指導を受けられる貴重な機会「ファミリーデイ」が開催されたので、その様子やスクール運営を通して、彼が子どもたちに伝えたい想いについてレポートする。
 
 
「MAKOTO HASEBE SPORTS CLUB」は、長谷部の故郷である藤枝市をはじめ、浜松市、磐田市と静岡県内3拠点で週1回のサッカースクールを開講し、現在は幼児から中学生まで約320名が在籍している。
 
 スクールの売りは、なんといっても日本一サッカーIQが高いと評す声もある現役ブンデスリーガー・長谷部誠から直接指導を受けられること。本イベントのように一緒にピッチに立てるのは年に1~2回程度だが、シーズン中でも長谷部が自ら作成した動画メッセージや課題が定期的に送信されている。指導者も昔から長谷部の信頼を得ている人材が多く、長谷部イズムは日々子供たちに伝えられている。
 
 今回のイベントでも、子どもたちには事前に動画メッセージでテーマが与えられていた。
「たとえばこの年代では、ドリブルで完全に抜ききってきれいにゴールを決めたいという気持ちがあるけど、ゴールというのはきれいな形ばかりではないので、抜ききる前にコースが空いたらシュートを打てということを動画で伝えてありました」(長谷部)
 
 実際にゲーム形式の練習を見ても、少しでも前が空いたら積極的にシュートを打っていく子どもたちが多く、動画メッセージが確実に伝わっていることが窺えた。
 
 その他にも「たとえばブンデスの試合で僕が良いと思ったシーンをピックアップして子どもたちに見せて『この場面はこの選手はどう考えていると思う?』といったことを投げかけて、子どもたちの考えをノートに書いてもらって、僕がまた次の動画で答えを伝えるといったコミュニケーションもやっています」(長谷部)
 
 スクールの基本精神としても、子どもたちに自分で考える習慣を身につけさせることを大事にしており、悩むことの大切さも教えている。いずれにしても長谷部校長が発する言葉の重みや影響力は、子どもたちに対しても絶大であり、彼らのイメージを豊かにする効果は非常に大きいようだ。
 

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