【コラム】3世代の日本代表はなぜ“アジア8強の壁”を越えられなかったのか?

2014年11月04日 浅田真樹

続けざまの敗退もネガティブな材料ばかりではなかった。

アジア大会に臨んだU-21代表はベスト8止まりだったものの、足下の技術がある長身CBの岩波など、将来的な可能性を感じさせる人材も目についた。(C) Getty Images

 3世代の日本代表がアジア各国との真剣勝負に臨み、図らずも全チームが"アジア8強の壁"に行く手を遮られた。日本サッカー界の育成に突きつけられた重い現実……。この3世代の戦いすべてを現地取材した、スポーツライターの浅田真樹氏が、各年代別代表に共通する問題点をあぶり出す。
 
【U-21日本代表photo】アジア大会招集メンバー
 
 今秋、U-16、U-19、U-21、それぞれの日本代表がアジアの年代別大会に臨み、揃って準々決勝敗退に終わった。
 
 U-16、U-19については、来年開かれる世界大会の出場権獲得に失敗。U-19代表が出場権を逃すのはこれで4大会連続となり、両代表がともに世界大会に出場できないのは91年以来のことである。
 
 一つひとつがそれぞれ十分に衝撃的な敗戦だったにもかかわらず、わずか2か月足らずの間にそれらすべてが集中すると、ショックの大きさは何倍にも膨らむ。なぜ日本はこれほどの"惨敗"を喫したのだろうか。
 
 実際に現地で3大会を取材した印象として、まず言っておきたいのは、日本の育成が全否定されなければならないほど、ネガティブな材料ばかりではなかったということだ。
 
 例えば、CB。日本ではサイズのあるCBの人材不足が長年指摘され続けているが、3世代の代表を見ていると、かなり状況は改善されているように感じる。
 
 しかも、単にサイズがあるというだけでなく、U-21代表の岩波拓也やU-19代表の中谷進之介のように、足下の技術も安定したCBが増えている。これは育成年代において、各クラブや高校が地道な活動を続けてきた成果だろう。
 
 また、U-16代表の阿部雅志や、U-19代表の奥川雅也のようなドリブラーが各世代に現われてきていることは、育成の多様化が進んでいることの証明だ。とかく個性がないと言われがちな日本の選手だが、彼らのように国際試合でも決め手となれるレベルの選手が出てきていることは明らかな変化だと言える。
 
 だが、その一方で、CBと同様に日本での人材不足が指摘され続けているストライカーについては、依然として課題が残ったままだ。点取り屋の存在がいかに重要であるか。そのことは、偶然にも3世代すべてで行なわれた日韓戦が物語っている。
 
 U-16ではイ・スンウを擁した韓国が勝利し、U-19では南野拓実を擁した日本が勝利。日韓ともに点取り屋の人材に乏しかったU-21(韓国はU-23だったが)では、PKによる1点のみで韓国が勝利した。つまり、必ずしも試合全体の内容とは関係なく、何年かにひとりというタレントの存在が勝負を決したわけだ。
 
 こればかりは育てようと思って育てられるものではないのかもしれないが、ストライカーの有無が勝敗の大きな決め手となっている以上、やはり看過はできない。偶発的なタレントの出現を待つばかりでなく、もっと育てるという感覚が必要だろう。
 
 具体的に言えば、昨今重視されているパス技術ばかりでなく、シュート技術がもっとクローズアップされるべきだ。相手DFが前にいる時、どうすればシュートコースを開けられるのか。どういうタイミングでシュートを打てばGKはタイミングを取りづらいのか。そういったことが当たり前に浸透していってこそ、突出したストライカーも現われてくるのだと思う。

次ページU-19代表の精神力が弱かったはずはない。

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