トッテナムの市場競争力はアーセナルに比肩! レビー会長がポチェティーノ監督と好連携【ビッグクラブの強化部門&フロント採点】

2019年06月26日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

経済的な競争力で見劣りするが…。

レビー会長(左)とポチェティーノ監督(右)のタッグで、トッテナムは着実に競争力を高める。18-19シーズンはクラブ史上初めてCL決勝に勝ち進んだ。(C)REUTERS/AFLO

 トッテナムはマンチェスター・Uやチェルシーと同じく、強化部門のトップにこの分野のエキスパートを置かず、経営トップが強化の全権を握るワンマン体制だ。

 表向きの強化責任者はチーフスカウトのスティーブ・ヒッチェンということになっているが、実際にはダニエル・レビー会長が全てを取り仕切っている。

 このレビーにマンチェスター・Uのエド・ウッドワードやチェルシーのマリーナ・グラノフスカヤと違う点があるとすれば、エージェントの売り込みよりも監督の意見に積極的に耳を傾けるところだろうか。

 トッテナムは経済的な競争力でライバルに劣るため、競合の多いビッグネームの獲得が難しく、それゆえターゲットを絞り込んだ的確な補強をローコストで実現しなければならないというハンデを背負っている。レビーは少なくともそれを自覚している。

 スカウティングと交渉力に関しては、スタジアム建設コストの負担から昨夏に補強を行わなかった関係もあり、現状に対しては低い評価を付けざるをえない。とはいえ、クリスティアン・エリクセンやデル・アリ、ソン・フンミン、トビー・アルデルワイレルド、ムサ・シソコなど、限られた予算の中で的確な補強を続けてチーム力を高めてきた点は評価に値する。

 チームマネジメントについても、レビーが強いプレゼンスを持って監督をサポートしており、大きなトラブルはほとんど起こっていない。スタジアムやトレーニングセンターなど施設面の充実も進み、メガクラブとしての競争力を高めてきたこともあり、移籍市場における総合力ではチェルシーを追い越し、アーセナルと肩を並べるレベルに達しつつあるイングランドだと一番の成長株だ。

 強化に関しても監督への依存度が高いだけに、もしマウリシオ・ポチェティーノが去ったらその後をどうするかという問題はあるが……。

[トッテナムの強化部門&フロント採点]
●スカウティング:5点
●交渉力:5点
●チームマネジメント:6点
(すべて10点満点)

文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※ワールドサッカーダイジェスト2019年5月16日号より転載。

【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にジョゼップ・グアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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