自慢の攻撃も機能不全…5戦未勝利と苦しむ名古屋は自分たちの良さを見失っていないか

2019年06月24日 今井雄一朗

中途半端な攻撃のあとでは、どれだけ準備していても守備の状態は悪い

負傷明けのジョーが本調子でないのも勝ち星から離れている要因だろう。写真:徳原隆元

 あれだけ滑らかに駆動していたはずの名古屋グランパスの歯車に狂いが生じている。アウェー・川崎フロンターレ戦での引き分けから5戦連続で勝ちがなく、うち3戦は勝点ゼロ。つまり負けている。序盤の快進撃が嘘のような低調ぶりはもちろん相手の対策が進んだが故でもあるが、それ以前に名古屋が名古屋らしさを失っていることが一番の敗因だ。その理由を考えていく上でキーワードとなりそうなのは、"適材適所"であるような気がする。
 
 今季の名古屋は選手層の充実から、誰が出ても同じスタイルとクオリティを一定以上に保つことができるようになった。その反面、やや自分たちのスタイルに執着してしまう傾向も強まってきていた。勝っていた時期はそこも良い意味で逸脱して戦うことができていたのだが、劣勢が逆に戻るべき場所としてのチームスタイルを意識させすぎているようにも見える。清水エスパルスとの一戦も全体としては悪くなかったのだが、パスを回す、敵陣に押し込む、人数をかけて攻撃をする、という部分を逆利用されて、むしろ試合は清水のペースで進められてしまった。
 清水の狙いは大方のチームと同じリトリートからのカウンターである。加えて中盤に圧力をかけ、ジョアン・シミッチからのパスコースを潰し、名古屋があまり得意としていないシンプルなサイド攻撃を仕向けるように守ってきた。ボールを奪えばキープとクリア、カウンターの判断も明瞭で、フィードの多くはドウグラスが競り勝ってくれた。ドウグラスの空中戦の強さはリーグ屈指であり、単純に封じ込めようとしても不利が多い。マッチアップすることが多かった中谷進之介はインターセプトも駆使して何とか起点を作らせまいとしていたが、スピードのある北川航也との補完性は高く、リスクは常に感じながらのプレーを強いられた。
 
 ここで普通ならば、少し人数を割いてその周囲に散らばるセカンドボールの確保を考えるところだ。しかし、名古屋は前述の通り攻撃はあくまで分厚く人数を割き、サイドバックも高い位置をとった。その果敢さは買う。しかし対応はしなければいけない。

 ただし、それも結果論ではあり、攻撃が上手く回っていればそのリスクが格段に減っていたこともまた事実だ。相手にクリアをさせればこうした流れも単調で対応しやすいものになる。名古屋の文脈は基本的には攻撃に軸足を置いて展開していく。負傷明けのジョーの動きが鈍く、この日はゴールから遠い位置でのプレーが多かったことも多分に影響した。中途半端な攻撃のあとでは、どれだけ準備していても守備の状態は悪い。ただでさえ守備力の高くないチームがフィルターなしで相手の長所を受け止めれば、それは厳しくもなって当然だ。

次ページポジションはあってないようなもの、という枠組みに逆に囚われている気さえする

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