チリ戦の真実。“健闘”した森保ジャパンはなぜ大敗を喫したのか?【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2019年06月20日 小宮良之

チリは精度と強度が高かった

チリに4ゴールを叩き込まれた日本。悲観するような内容ではなかったが……。(C)Getty Images

<ディテールの積み重ねが大きな差>

 それがコパ・アメリカ開幕戦、日本対チリの真実と言えるだろう。

 日本は0-4で敗れたものの、決して圧倒されたわけではない。勝利は難しかったとは言え、引き分けてもおかしくはない局面はあった。少なくとも、恥じるような戦いはしていない。

 しかし0-4というスコアは大袈裟ではなく、それだけの大きな差もあった。

 南米王者であるチリは、右のマウリシオ・イスラ、左のジャン・ボーセジュールというサイドバックが高い位置を取りながら、幅を使い、分厚い攻撃を作っていた。狙いとしては、日本と似ている。ただ、その精度、強度が高かった。

 中に絞って守備を固める日本を、丹念に分散、拡散させ、再び手薄になった中へ。前半はなかなかシュートまでいけていないが、我慢強く、じわじわ攻撃を続けた。右のホセ・ペドロ・フエンサリーダ、左のアレクシス・サンチェスが起点になって、アルトゥーロ・ビダルも遊撃兵のようにそこら中に顔を出し、さらにボランチのチャルレス・アランギスもゴール前に迫った。

 41分の先制点は、まさにその攻撃の産物だろう。左右両サイドから攻め続け、奪った後の右CKだった。ファーポストに来たクロスに対し、エリク・プルガルがマーカーを睥睨するようなヘディング。豪快にゴールへ放り込んだ。
 
 チリは日本のプレスに対し、ボールを失うこともあった。しかし取り返す対応も迅速で、高さ、スピード、強さでわずかずつ上回っている。インテンシティーの差で、日本を飲み込んでいった。

 54分、チリは前半と同じようにサイドから幅を作り、深さをこしらえて攻め込んでいる。イスラが右サイドの高い位置でボールを受けた後、ペナルティーエリア正面で待ち構え、マークを外していたエドゥアルド・バルガスへマイナスのパス。これをストライカーのバルガスがダイレクトシュートし、日本DFを掠めてネットを揺らした。

 決定力は目に見える差と言える。日本は決定機を作るも、FWが決め切れていない。ただ、それは違いのひとつで、チリはチームとして途切れることなく守備陣を崩した。

 82分の3点目は象徴だろう。チリは高い位置でボールを持ち、右サイドを崩そうと、内にも外にも人が裏を取りに走る。一度二度と攻め切れず、ボールを下げるも、諦めずに代わる代わる裏へ。そしてボールを引き出すと、エリア内で相手を外し、クロスを折り返し、アレクシス・サンチェスがヘディングで押し込んだ。
 

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