リアル“南葛SC”の福西崇史監督が挑む 「成長」と「勝利」の同時追求

2019年06月19日 伊藤 亮

「あの敗戦があったからこそ、今監督をしています」

インタビューに応じてくれた南葛SCの福西監督。昨年の悔しい経験を率直に語ってくれた。写真:田中研治

 漫画『キャプテン翼』の原作者、高橋陽一氏が代表を務めるリアル"南葛SC"の東京都リーグ1部での戦いは、中盤戦に突入した。7戦を終えた時点で、4勝1分け2敗の勝点13。上位争いは混戦模様。チームはこれ以上ない経験を積んでいる。試合日程の関係で5月26日から約1か月、リーグ戦の間が空いた。その間に夏場の勝負へ準備を整え、この先に待つ上位チームとの直接対決へと気持ちを高めている。
 
  ホーム・葛飾区の大きな期待を背負っている南葛SC。その陣頭指揮を執っているのは2019年シーズンから監督に就任した福西崇史氏だ。いわずと知れた日本サッカー界のレジェンドが、指導者のキャリアの第一歩に選んだのが南葛SCだった。
 
 福西監督と『キャプテン翼』、南葛SCとの縁、そして目指すべきサッカー、チームにもたらそうとしている意識改革、融合とは――。
 
 今回の特集では3回にわたり、関東リーグ昇格を目指しながら東京都リーグ1部を戦う福西崇史監督の考えに迫る。第1回では、監督就任への流れと、目的から逆算して導き出された目指すべきサッカー像に関して語ってもらった。
 
――◆――◆――
 
 2018年8月22日。ひとつのニュースが日本サッカー界を賑わせた。「福西崇史、10年ぶりの現役復帰」。黄金期のジュビロ磐田の主力で、J1のベストイレブンに選出されること4度、日本代表として国際Aマッチ64試合に出場し、ワールドカップにも2度出場している名選手が41歳で現役復帰の場に選んだのは、東京都社会人リーグ1部を戦う南葛SCだった。
 
 小学生時、友人に誘われ遊びの延長で始めたサッカー。のめり込むきっかけは『キャプテン翼』だった。さらに、キャラクターに加えチームに魅力を感じた福西少年は、作中の南葛SCに注目するように。そんな、自身のサッカー人生に大きな影響を与えた『キャプテン翼』の作者、高橋陽一氏からオファーをもらったこと、しかもかつて憧れたチームと同じ名前のクラブの一員になる――。Jリーグを目指し、一つひとつカテゴリを上がっていこうとする姿勢にも惹かれた。
 
 チームへ合流し、公式戦に出場したのは関東リーグ昇格をかけた関東社会人サッカー大会1回戦から。しかし、チームは準々決勝で敗退してしまう。
 
「あの敗戦があったからこそ、今監督をしています」
 
 南葛SCの目標であった関東リーグ昇格の力になれなかった悔しさが、福西崇史新監督を実現させた。
 
「現役復帰して、試合に出て、監督の話をいただいて。将来指導者になることを見据えて解説などの仕事をしていた自分にとってはありがたいことで。自分の望むキャリアをスタートさせるのに、南葛SCは魅力のあるチームでした」
 
 新監督の発表があったのは2018年12月24日。翌2019年、2月11日の東京都社会人サッカーチャンピオンシップ4回戦から指揮を執り始めた。
 

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