【コラム】大凡戦を演じた森保Jの主軸を脅かすのは? 大迫勇也も堂安律も吉田麻也も安泰ではない!

2019年06月06日 加部 究

森保監督のチーム作りは、日本サッカー全体への繊細な気配りに満ちているが…

アジアカップ以来の出場となった大迫もトリニダード・トバゴのゴールをこじ開けきれず。不完全燃焼の感が漂う一戦となった。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 サイズを備えたセンターバックの有望株が続出し、逆にサイドバックの人材が枯渇気味の現状を考えれば、3バックは早々に取り組むべきテーマだった。特に酒井宏樹、長友佑都、室屋成をいずれも招集できないコパ・アメリカが控えていることを思えば、トリニダード・トバゴ戦は試しておくべきラストチャンスとも言えた。

 
 結論から言えば、森保一体制が発足して以来最大の凡戦で、歯応えのある相手が真剣勝負を挑んで来たら惨敗の可能性もあった。前半からボールは支配した。しかし選手間の距離は広がりテンポが上がらず、分厚い攻撃に繋がらない。前半は中島翔哉の個の仕掛けばかりが目につく流れでスコアレスに終わる。だがこういう展開でも森保監督は簡単に見切りをつけない。ようやく60分以降に少しずつカードを切り、前がかりの姿勢を強めたが、結局GKフィリップの好守もあり、すっかり疲弊し切った相手を最後まで仕留めることが出来なかった。
 
 森保監督のチーム作りや采配は、ハビエル・アギーレやヴァイッド・ハリルホジッチ両監督とは対照を成し、日本サッカー全体への繊細な気配りに満ちている。就任初戦から中島、南野拓実、堂安律の三銃士を2列目に配し、やがて冨安健洋を抜擢したように、心底見込んだ才能は躊躇なくピッチに送り込む。
 
 一方で世代交代の流れから厳しそうな国内組にも門戸を開くことを忘れない。例えば、今まで選考する度に故障でチャンスを逃して来た守田英正を、今回はスタメン起用している。また鈴木武蔵が故障で外れると、代わりにJ1で首位を走るFC東京の永井謙佑を追加招集した。トリニダード・トバゴ戦は3バックで臨むことを決めていたはずなので、現実的に永井の起用は難しい。もちろん3バックでも前線を1トップ2シャドーではなく、三角形をひっくり返せば2トップの一角として可能性はあるが、2列目が最大の激戦区なのを考えれば得策とは言えない。
 
 外国人監督なら、そんなバランスはまったく眼中にない。ただひたすら自分の戦術に即したコマを探しテストする。しかし森保監督は、主軸を徹底して信頼すると同時に、地道に頑張る心も折らないように気遣う。ほぼ欧州で活躍するのが代表入りの条件になりつつある中で、国内シーンにも目を凝らしているというメッセージを発信する。
 
 ただしこの優しさは、時として弱点になる可能性も秘めている。動くのが遅れて致命傷を負ったアジアカップ決勝が象徴的だったが、この夜もしっかり勝ち切ろうとするなら後半開始から動くべきだった。
 

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