15歳でプロを諦めた男がアルゼンチンで最注目の監督になれた理由――セバスティアン・ベカセッセ【独占インタビュー|前編】

2019年06月07日 チヅル・デ・ガルシア

“余りもの”を束ねて優勝争いを展開

快くインタビューに応じてくれたベカセッセ。写真の場所は自身にとってのパワースポットなんだとか。 (C) Chizuru de GARCIA

 昨シーズン、アルゼンチンのスーペル・リーガ(国内1部)では、中堅クラブのデフェンサ・イ・フスティシアが、終盤戦まで優勝を争う快進撃を見せて話題となった。

 ビッグネームは皆無。それどころか、レギュラーの大半が前所属クラブで構想外となった、いわば"余りもの"の選手で構成されたチームを率いて、ダイナミックで美しいプレーを展開し、目の肥えた専門家やサッカーファンを唸らせたのが、38歳の青年監督セバスティアン・ベカセッセだ。

 ベカセッセは、あのホルヘ・サンパオリ(現サントス=ブラジル)にアシスタントコーチとして通算14年間従事した経歴の持ち主で、指導者歴は19年という"ベテラン"である。

 チリ代表のスタッフとして2014年のブラジル・ワールドカップに参戦し、翌年のコパ・アメリカでは同国の優勝に寄与した。昨夏に行なわれたロシア・ワールドカップでは、サンパオリの右腕として母国アルゼンチン代表のコーチを務め、大会後に辞任。16年から17年まで指導していたデフェンサに復帰するなり、チームの強化に成功して一躍評価を高めた。

今回、『ワールドサッカーダイジェストWeb』では、アルゼンチンで最も注目を集める若手監督のひとりとなったベカセッセの独占インタビューに成功。これまでのキャリアについて、大いに語ってもらった。

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――あなたはサッカー選手の宝庫として知られるロサリオの出身ですよね。ロサリオにはニューウェルスとロサリオ・セントラルの2大クラブがありますが、ニューウェルスのファンだとか。

ベカセッセ(以下、B):父の影響です。ニューウェルスの熱狂的なファンで、私が小さかった頃からスタジアムに連れて行ってくれました。アウェーゲームの時は一緒にラジオを聴きながら応援したり、時にはバスに乗って首都ブエノスアイレスまで観戦に行ったり。今は職業柄、どこか特定のクラブのファンであることを公にするのはあまり好ましくないのですが、実は背中にニューウェルスのタトゥーもいれてあるんですよ。

――そんなに熱心なファンだったのなら、あなたが子どもの頃、ニューウェルスが、国内リーグで優勝した時の感激は相当なものだったのではないですか?

B:そう、あれは91年と92年、マルセロ・ビエルサ(現リーズ)が監督だった時でした。当時のニューウェルスは素晴らしいチームで、ゲームに捧げる情熱やコミットメントがあり、アイデアも豊富で、それをひたすら貫く姿勢といったものが、サポーターの心を掴んだんです。

 そんな魅力的なチームを作っていたのがビエルサで、私は、彼のサッカーに懸ける熱意に強く影響されました。あの時、彼自身が下部組織で育て上げた選手たちを率いてタイトルをとったのですが、クラブへの愛情や忠誠心といったものを体現していたと思います。

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